イラン大統領、ヒジャブ着けない著名ジャーナリストの取材をキャンセル

国連本部で記者会見するイランのライシ大統領(9月22日)|Bebeto Matthews / AP Photo

◆屈しないジャーナリスト、アマンプールの意思表明
 アマンプールはツイッターの一連の投稿の最後に、大統領が座るはずだった空っぽの椅子を含めた「対談風景」の写真を投稿し、「イランで抗議活動が継続し、人々が殺害されるなか、ライシ大統領との対話は重要な瞬間となるはずだった」とコメント。事後のインタビューで、ヒジャブを着用しないという判断は、ジャーナリストとしての即座の決断であったという。それは、一つは法的に必要ではないこと、そしてもう一つは、事前に予定されたインタビューを実施しようとする際に、いかなる政府からも脅されたり強制されたりはしないのだという原則に基づいた判断だ。

 アマンプールは、なぜ大統領がヒジャブ着用の拒否に対して、インタビューを取りやめたかということについての明確な理由はわからないとした上で、ヒジャブ着用の強制や、女性の身なりを取り締まる道徳警察の暴力が発端となって広がる抗議活動が本国で激化する状況において、大統領がヒジャブを着用しない女性の隣に座っているという画像を流したくないという判断があったのではないかと推測している。同時に、彼女は、大統領が国連総会の場においてヒジャブを着用しない女性たちと朝食ミーティングやプレス会談を実施していたという矛盾点に対して憤りも示した。

 イランの権力に抗い、女性の権利についての姿勢を示したジャーナリストはアマンプールが初めてではない。イタリア人ジャーナリストのオリアーナ・ファラーチ(Oriana Fallaci)は1979年にイランのホメイニ師にインタビュー。女性の服装に対する取り締まりについてホメイニとやり取りを交わした末、最初には着用していたヒジャブを「馬鹿げたものだ!」といって取り払ったという。インタビューはその場で一旦終了したものの、再開された際も彼女は屈することなくホメイニに立ち向かい、彼が思わず苦笑するほどだったという。

 アマンプールやファラーチの行動は、イランの現場で命懸けで抗議活動を行う人々の行動とは比べることはできないものの、ジャーナリストの決断と行動として勇気があるものであり、たたえられるべきものだ。また今回の件に関しては、アマンプールがイラン系の女性であるからこそ、その行動はさらに象徴的なものだといえる。

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Text by MAKI NAKATA