イラン女性、40年ぶりにサッカー生観戦できるように 発端となった女性ファンの悲劇

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 新たな女性の権利が認められた。イラン女性は、先月首都テヘランで行われたサッカーの2022年ワールドカップ(W杯)カタール大会アジア2次予選をスタジアムで観戦することができた。これはまさに約40年ぶりである。チケット販売の初回分は1時間以内に完売し、追加された座席チケットもその後すぐに完売となった。

 テヘランでのチケットの購入ができた3500人の女性たちは、女性警官約150人の警備の下、男性から隔離された別の席で試合を観戦したが、チケット購入ができただけでも大きな一歩と言える。そのなかの一人、サッカージャーナリストのラハ・プーラバカクッシ(Raha Poorbakhsh)さんは「この業界で何年も働いているけれど、いつもテレビでしか見られなかったから、それを実際にスタジアムで体験できるなんて、本当に信じられない」と話した(ガーディアン紙)。

◆背景となった女性の自殺
 イランにおいて、女性のスタジアム入場禁止は法律や規制に書かれている訳ではない。しかし、スタジアムの客は男性が大多数を占め、ときに半裸になったりすることもあるため、1979年のイスラム革命以来、「女性を守るため」という理由から、女性の入場が厳密に禁止されていた。特例として、2001年に約20人のアイルランド人女性がワールドカップ予選に参加し、2005年には数十人のイラン人女性がイラン対バーレーンの試合を見ることを許可された。2018年10月には、ボリビアとの親善試合のためにイラン人の「選ばれた」女性100人がテヘランのアザディ・スタジアムに入場した。しかし翌日、検察総長は「罪へつながる」(lead to sin)として、もう二度とないだろうと言った。

 2019年3月、イラン人女性のサハル・ホダヤリ(Sahar Khodayari)さんは、男性に変装してスタジアムへ入場しようとしたところを逮捕された。その後、有罪が決まり、ホダヤリさんは9月に裁判所の前で焼身自殺した。彼女がファンだったエステグラル・テヘランFCのチームカラーのブルーが由来となり「ブルーガール」とも呼ばれた。イラン政府は、彼女の死の約1ヶ月後に女性のスタジアムでの試合観戦を許可した。

Text by sayaka ishida