小型トラックをロケットランチャーに 対無人機システム「バンパイア」、米がウクライナに提供へ

ドーバー空軍基地で積み込まれるウクライナ支援パッケージ(4月29日)|Alex Brandon / AP Photo

◆2時間で民間車両をロケットランチャーに
 バンパイアはミサイルシステムとしては非常に小型であり、車両の荷台に取りつけて運用することができる。システムは、4連装ロケットランチャーと、ボール状のセンサーがペアになったものだ。製造元のL3ハリス社は、「一般的な工具と2名の人がいれば、設置はおよそ2時間以内に完了できる」としている。

 ヤフーニュースは、「荷台がついたほとんどの車両に据えつけることができるポータブル・キット」だと説明している。記事はまた、「いうなればこのシステムは、ピックアップ・トラックやその他の乗り物を、移動式ミサイルランチャーへと変貌させるものだ」と述べている。ピックアップ・トラックとは広い荷台のある2人乗り自動車であり、海外では自家用車としても普及している。つまり、既存の車両を武装化できる利点がある。米ニューヘブン大学のマシュー・シュミット国際問題担当理事は、軍事車両そのものをアメリカから移送するよりも早期に展開可能だと指摘している。

◆射程距離では弱点も
 反面、射程が短いというデメリットがある。防衛問題に詳しいアメリカのエリック・テグラー氏は米フォーブス誌(8月26日)に寄稿し、「ピックアップ・トラックの荷台では高度も速度も発揮できない」ため、ヴァンパイアが放つミサイルまたはレーザー誘導弾の射程は最大でも1.6キロ、悪条件では0.4キロ程度に留まるとの見方を示している。

 とはいえ、個人所有のピックアップ・トラックを兵器に転用できる利点は大きい。対無人機だけでなく、地上戦での活躍も想定されるという。ニューヘブン大学のシュミット理事はヤフーニュースに対し、民間のピックアップにバンパイアを搭載することで、敵の地上部隊に対し矢継ぎ早に砲撃を繰り出すことができると説明している。相手が小規模な歩兵部隊であれば、その行動を制限したり、兵員輸送車を攻撃したりといったことが可能になるようだ。

 アメリカから遠く離れたウクライナへの支援において、車両部を切り離し兵器部分だけを届けられるバンパイアシステムは、より迅速な兵器支援の実現に一役買いそうだ。

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Text by 青葉やまと