激化する大国間対立、拡大する第3諸国陣営

インドネシアのジョコ大統領(8月16日)|Tatan Syuflana / AP Photo

◆米中対立のなか拡大する第3諸国陣営
 しかし、世界を客観的に眺めれば、拡大しているのは非欧米世界だけではない。それは、米国vs中国、欧米vs非欧米のどちらの構図にも所属しない、もっといえば大国間の対立に巻き込まれたくないとする第3諸国陣営である。これは冷戦期、米ソ両陣営の東西冷戦に対し、そのいずれの陣営にも加わらず積極的な中立を図ってきた非同盟主義と類似するが、国際政治が再び大国間競争の時代に回帰するのと同じように、今日、インドやASEAN、アフリカや中南米などいわゆるグローバルサウスではそのような風潮が漂ってきている。

 こういった国々がいま、積極的に米中対立など大国間対立とは一線を画す「非大国間対立」の世界の形成を進めているわけではない。しかし、今年秋にG20を主催するインドネシアのジョコ大統領は6月、ウクライナ侵攻で欧米とロシアの対立が激しくなるなか、ロシアを孤立させるべきではないとの認識を示した。また、欧米によってロシア産原油への締め付けが強化され、世界的な原油高が起こるなか、インドは安価なロシア産原油の輸入を増大させることはエネルギー安全保障上必要な措置だとの認識を示した。インドネシアは欧米や日本との関係を重視しており、インドもクアッドの一角であるが、何から何まで欧米と足並みを揃えようとはせず、そこにあるのは「自らの国益を第一に考え、そのためには大国間対立とは距離を置く、一線を画す」という非同盟主義的な価値観だろう。

 こういった価値観はインドネシアやインドだけでなく、今日、ASEANやアフリカ、中東や中南米などの国々にも共有される価値観であり、大国間対立が激しくなればなるほど広く普及するであろう。

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Text by 本田英寿