米供与のロケット砲ハイマースが威力発揮 「前線維持に貢献」とウクライナ

M142高機動ロケット砲システム(HIMARS)|Tony Overman / The Olympian via AP

◆ロシア司令部など20ヶ所を破壊
 ウクライナ軍が東部で苦戦してきた要因のひとつに、遠方を攻撃できる兵器を持たなかったという点が指摘されている。そこへ新たに導入されたハイマースは、これまでウクライナ軍が攻撃できなかったロシアの軍事施設への攻撃を可能にした。AFPはハイマースにより、従来の大砲の射程外となっていたロシア軍の大規模な弾薬庫や司令部が20ヶ所以上破壊されたと報じている。ロシア軍は鉄道基地や前線に近い町に弾薬を貯蔵する傾向があり、ウクライナ側はこの特性を利用して弾薬庫を狙い撃ちにしている模様だ。ロシアとしては反撃したいところだが、ハイマースは機動力の高い車両に搭載されており、破壊が難しい。

 テレグラフ紙によると、前線で活動する軍事ブロガー集団のひとりは、「これはほんの始まりに過ぎないことは明らかだ」とみている。ウクライナ軍はこれまで、ロシア側の司令部や軍事施設の所在地を把握しながらも、射程不足で攻撃できていなかった。今後はこうした標的を次々と破壊していく可能性があるようだ。

◆防衛線の安定化に貢献
 AFPによると、現在ウクライナには12基のハイマースが到着しており、それぞれ一度に6発のロケットを発射することができる。数百発の実弾の在庫を確保している模様だ。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(7月19日)は、ウクライナ軍最高指揮官の見解として、ハイマースが「防衛線と状況の維持に貢献する重要な要素」になっているとの見解を報じている。また、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアに「物流面で著しい損失」を与えていると発表した。

 予断を許さないウクライナの前線だが、ハイマースによってこれまでよりもロシア支配地の深部を狙えるようになったことで、形勢が大きく変化する可能性がありそうだ。

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Text by 青葉やまと