日本にとって難しくなる日中関係

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 ロシアによるウクライナ侵攻から4ヶ月となるなか、中国税関総署は6月21日までに、5月のロシアからの原油輸入量が前年同月比で55%、天然ガスが54%それぞれ大幅に増加したと発表した。日本や欧米はこの4ヶ月間、ロシアに対する制裁を強化してきたが、中国はロシアを非難せず、一切制裁も課してこなかった。むしろ、ロシアの孤立は避けなければならないとして経済的には接近する姿勢を示してきたが、今回それが具体的な数字として表れる結果となった。対ロシアにおいて日本と中国は真逆の立場にあるが、それはすでに後戻りできないところまで来ているように筆者は感じている。

◆「中国離反、欧米接近」を促す日本
 日本は対中国非難で欧米ほどトーンが強いわけではないが、間接的に中国離反や欧米接近を促している。たとえば、岸防衛大臣は6月21日、訪問先のカンボジアの首都プノンペンでティア・バン副首相兼国防相と会談し、中国を名指しで非難しなかったものの、東シナ海や南シナ海における力による一方的な現状変更はいかなる地域でも許されないと間接的に中国への警戒感を伝えた。

 今日、ASEANでもカンボジアやラオス、ミャンマーは中国と密接な関係にあり、日本による「間接的な中国離反、欧米接近」戦略が機能する可能性は低いのが現状だ。しかし、日本周辺の安全保障環境を戦略的に展望すれば、中国離反、欧米接近を促すことは日本にとって重要なオプションだろう。

Text by 和田大樹