米、先進的な地対空ミサイルシステム「NASAMS」をウクライナに提供へ

NASAMS の発射機|Ministerie van Defensie / Wikimedia Commons

◆複数の脅威からドンバスを保護
 ウクライナにNASAMSが提供されれば、複数の目的で活用されそうだ。19フォーティ・ファイブは、NASAMS本来の目的として、2つのタイプの脅威に対応できると解説している。主に前線の低空で活動する敵の戦術機を撃墜することに加え、ウクライナ奥地を目指して飛来する長距離巡航ミサイルと弾道ミサイルへの対処が期待される。これらに加え3つ目の作用として、ロシア側無人機の消耗を誘発できる可能性もあると同誌は分析している。

 ウクライナ東部ドンバスはロシアが占領域を広げているが、一部地域はウクライナが防衛を続けている。AP通信は、NASAMSの活用によりウクライナ軍がこうした地域を守り抜くことを米当局が期待していると報じている。

◆その他火砲やレーダーなども提供へ
 すでに兵器パッケージを複数回にわたりウクライナに提供してきた米政府は、今後も支援を継続する方針だ。米CNN(6月27日)はバイデン大統領が、「さらに高度なロケットシステムおよび武器弾薬」を提供する意向を明言したと報じている。ウクライナ当局は100マイル(約160キロ)以上離れた目標を破壊できる能力を求め、NASAMSなどの提供を訴えてきた。今後はNASAMSとあわせ、その他の火砲や弾道から発射地点を特定する対砲兵レーダーなど、ほかの軍事支援も発表されるとみられる。

 AP通信はこのほか軍事・経済援助施策として、バイデン大統領が75億ドル(約1兆円)の拠出を発表する見込みだとも報じている。

 火器不足による撤退や士気低下も報じられるようになったウクライナ軍だが、高度なミサイルシステムの提供により、形成に変化がみられる可能性はありそうだ。

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Text by 青葉やまと