ウクライナ危機で日本・欧州関係が新たな局面へ ロシア寄り中国とは関係再考も

ドイツのショルツ首相(左)と岸田首相(4月28日)|Shuji Kajiyama / AP Photo

◆中国以外の同盟国を求めて
 ドイツのショルツ首相は初のアジア訪問先として中国を避け日本を選んだが、これは中国との絆を優先してきたアンゲラ・メルケル前首相の動きとは正反対だ。ポリティコ誌は、「中国がロシアとの戦略パートナー関係を強めるなか、ヨーロッパはアジアのほかの地域に同盟国を求めている」とみる。同誌はまた、「端的にいってEU諸国は、ヨーロッパ地域で発生した予期せぬ戦争により、ロシアと揺るぎない絆で結ばれているであろう中国に対して認識を改めるよう迫られることとなった」と指摘している。

 加速する日本との連携について外交問題評議会は、「ロシアによるウクライナ侵攻は、日本とヨーロッパ諸国の戦略的協力関係をさらに大きく推進することとなった」と分析している。日本とNATOは1990年代から良好な関係を構築し、2013年4月には戦略的パートナーシップをさらに深める協定を締結してきた。ここにきて「ウクライナ危機が日本と欧州の関係にまったく新しい局面をもたらした」と記事は述べ、G7メンバー国として対ロシアの経済制裁に同調する日本の取り組みなどを取り上げている。

◆中国依存からの脱却
 ドイツでは、これまでメルケル氏の下で親中国路線の「貿易を通じた変革」を掲げてきた中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)さえも、現在では中国依存からの脱却を模索している。党指導部は、EU、アメリカ、アフリカの成長を重視し、「他国への依存」を軽減するよう主張している。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(5月5日)は「『他国』が何を意味するかは火を見るより明らかだ」と述べる。

 ショルツ現首相は中国への直接的な言及は控えているものの、サプラーチェーンを多様化し特定の国への依存を避けるべきだとの方針を示している。ポリティコ誌も、「ショルツ氏がどの国を意図しているのか、中国にとって理解に難くないだろう」とのコメントだ。

 経済成長が注目されていた中国との絆に代わり、日本との経済上・防衛上の絆が重視され始めたようだ。

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Text by 青葉やまと