日ロ関係を多層的に見る 関係悪化のいまこそ求められる考え方
外交関係を考える場合、重要なのは感情論ではなく戦略論であり、国益を全体的に、中長期的に考えることが重要になる。欧米といっても、たとえば米国と欧州ではロシア産天然ガスの依存度がまったく異なり、米国には米国の、英国には英国の、フランスにはフランスの、ドイツにはドイツの独自の対ロ関係があり、今後それらが表面化してくる可能性がある。
◆日本にとって隣国のロシア
日本国内では現在、北海道知床半島で観光船が沈没したことが大きな問題になっているが、第1管区海上保安本部によると、ロシア国境警備局から4月28日夕方、「ロシア警備艦が漂流者を発見したが、荒天のため引き揚げられず見失った。引き揚げたリュックサックの中には乗船者名義の銀行カードが入っていた」とファクスで連絡があったという。
ロシアへのイメージが国民の間でも悪化するなか、このニュースから我々は日ロ関係を多層的に考える必要があるだろう。外交や安全保障は政治の一部であり、常に何かあると政治色が強まるのは当然のことだ。しかし、日ロ関係は政治の独占物ではない。日ロ関係は経済や文化、社会、もっといえば人と人との関係が日ロ関係を構築するのだ。政治で関係が冷え込んでも、社会や文化の日ロ関係はその影響をできるだけ受けるべきではなく、我々は多層的に日ロ関係を捉えるべきだろう。
日本にとってロシアは隣国であり、その関係は米国や欧州とも異なる。日ロ関係が冷え込むいまこそ、我々は善悪の区別を明確にし、冷静に客観的な立場からロシアとの関係を考えて行動していく時だと筆者は考える。
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