艦艇寄港、軍派遣が可能か 中国・ソロモン安保協定締結 米豪阻止できず

中国の李克強首相とソロモン諸島のマナセ・ソガバレ首相(北京、2019年10月)|Mark Schiefelbein / AP Photo

◆首相は親中? 軍事目的を中国は否定
 中国の影響力拡大に対するアメリカと同盟国の懸念を和らげるため、ソガバレ首相は中国との安全保障協定が平和を損なうことはないと国会で発言した。中国外交部の報道官も、協定はソロモン諸島が社会秩序を維持し、自然災害と人道支援に対応することを中国が助けるもので、アメリカにリスクをもたらすものではないと説明。「アメリカは島国を主権のある独立国として見ているのか、それとも自国の付帯物として扱っているのか」と問いかけた。(ロイター)

 中国との協定のきっかけとなったのは昨年11月に首都ホニアラで起きた暴力的な抗議活動だった。市内のチャイナタウンの大部分が焼け落ちる事態となった。

 ソロモン諸島は長らく政情不安に悩まされている。同国はパプアニューギニアの東にある人口70万人弱の小国で、暴力を伴う民族間対立を経て、クーデターにより2000年にソガバレ氏が政権を握った。政治的・経済的に崩壊寸前だったが、オーストラリアとニュージーランドが軍隊を派遣して安定を取り戻した。しかし平穏も長くは続かず、政府の要請を受けてオーストラリアを中心とする多国籍のソロモン諸島地域支援ミッション(RAMSI)が設立され、駐留は2013年まで続いた。(アルジャジーラ

 ソガバレ首相は2019年に4期目の再選を果たしたが、その数ヶ月後には台湾と国交を解消し中国を支持する方向に動いた。この動きに誰もが賛成したわけではなく、11月の暴動にも影響したとされる。ソロモン諸島の野党党首マシュー・ウェイル氏は中国との安全保障協定の必要性に懐疑的だ。結局協定はソガバレ氏にとっては都合のよい傭兵であり、中国にとっては軍事的な姿勢を示すチャンスだと主張。協定の合意文書の公開を求めているが、ソガバレ氏は中国と話し合うと答えた。(同)

◆さらに高まる脅威 オーストラリアの憂鬱
 今回の協定に日本を含め多くの国が懸念を示しているが、最も批判しているのは2017年からソロモン諸島と安全保障協定を結んでいるオーストラリアだという。自国から2000キロも離れていないところに中国軍が進駐することになるのではないかという不安もある。(ロイター)

 タスマニア大学の中国研究者、マーク・ハリソン氏は、中国との関係が長らく緊張状態にあるオーストラリアにとって協定は「大打撃」だと述べ、中国が優位に立つ地域でのオーストラリアの未来はさらに厳しいものになったと見ている。同氏は、オーストラリアが2010年代初頭に中国台頭の意味を完全に見誤ったと指摘。その見直しも進んでおらず、今後の道のりは長いものになるとしている。(アルジャジーラ)

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Text by 山川 真智子