冷戦は終わっていないのか

中ロ合同軍事演習を視察するロシアのショイグ国防相と中国の魏鳳和国務委員兼国防相(2021年8月13日)|Savitskiy Vadim/Russian Defense Ministry Press Service via AP

◆冷戦は終わっていないのか
 そしてこの問題は、冷戦は依然として終わっていないという印象を我々に強く示すことになった。冷戦を米国とソ連という二つの主体で見るのであれば、ソ連がなくなっている今日、冷戦は存在しないと言えよう。事実、ソ連は1991年12月25日に正式に崩壊している。しかし、冷戦が公式的に終わったとしても、冷戦の名残はいまでも世界に存在する。その一つがプーチン大統領の脳裏にある冷戦敗者というイデオロギーだ。今回の侵攻に至るプーチン大統領の思いは上述したとおりだが、要はプーチン大統領のなかでは冷戦は終わっていないのである。

 また日本周辺にも冷戦の名残がみられる。朝鮮半島だ。朝鮮半島は冷戦の主戦場となり、長期間にわたった戦争の末、その区分けが北緯38度となった。その区分けは今日も続き、依然としてそれがなくなる兆しは見えない。今後も国際社会は冷戦の名残と付き合っていくことになる。
 
◆新冷戦は加速化するのか
 米中対立が激しくなるにつれ、新冷戦という言葉をよく耳にする。新冷戦の明確な定義ははっきりしないが、自由主義陣営と対立関係にある中国やロシアの存在力が今後国際政治でさらに高まるようであれば、新冷戦は旧冷戦と中身が異なるなかでいっそう激しくなる可能性があるだろう。ロシアによるウクライナ侵攻は国際政治上極めて大きな出来事になっており、今後は中国の出方が最も大きなポイントになるだろう。

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Text by 和田大樹