マツォーニとマツン…ヨーグルトめぐりジョージアとアルメニア険悪に

ジョージアのマツォーニ|Ieva Andersone / Shutterstock.com

◆アルメニア驚き メーカーは名称変更も
 ジョージアの環境保護農業省の農業食品局長は、ジョージアで登録された名称に類似した製品を積んだトレーラーが国境にあると税関から連絡を受け、トレーラーの通過を拒否したと説明している(コーカサス地方のニュースメディア『JAMニュース』)。アルメニアの経済省によれば、このトレーラーはマツンを積んでジョージア経由でロシアに向かっていた(OCメディア)。

 アルメニアの関係者は、マツォーニおよびマツンがどこに帰属するかを誰も尋ねてこなかったと不満を述べている。アルメニア当局によると、アルメニアの知的財産権当局は2011年、マツォーニの名称の登録について、アルメニアのマツンと混同される恐れがあるとしてEUとグルジアの関係機関に異議を申し立てていた。またマツンは昨年以降自由にジョージアを通過していたのに、後にジョージア側が厳格な地理的表示による保護を適用し始めたとしている。規制を回避して輸出するため、すでにアルメニアの乳製品メーカーのなかには「アルメニアン・マウンテン・ヨーグルト」と商品名を変更したところもある。(ジョージア・オンライン、ユーラシアネット

◆たかがヨーグルト、されどヨーグルト 非難の応酬は続く…
 両国政府は解決策を模索する姿勢を示しているが、両国民の間には険悪なムードが漂った。ジョージアがアルメニア産のマツンを禁輸したというニュースは、ソーシャルメディアで多くのジョージア人に歓迎され、典型的なアルメニア人嫌いの表現も見受けられたという。(OCメディア)

 一方アルメニア人は、どちらの名前も語源は古いアルメニア語の「mats(凝固する、接着するの意)」だと指摘。同じ見解を持つジョージア人の言語学者もいるが、多くのジョージア人は、アルメニアは地域のすべてのものの所有権を主張するという固定概念を持っているという。(ユーラシアネット)

 話題は両国の間で戦争が行われた場所カラバフや、コーカサス地方でその起源が論争になっている食べ物ドルマにまで飛び火。意図せず火を広げてしまったジョージアのテレビ局が謝罪に追い込まれる事態になった。あるグルジア人はフェイスブックで「アルメニアと戦争しようぜ」と冗談をいいつつ「アルメニアとジョージアはヨーグルトがもとで戦争になったと歴史に刻まれるだろう。これを望んでいるのか」と騒動へのいらだちを示した。(同)

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Text by 山川 真智子