最高指導者殺害も、ISにほぼ打撃なし 世界各地で脅威続く

シリア・イドリブ県アトメで米軍が作戦を行った後の建物(2月3日)|Ghaith Alsayed / AP Photo

◆イスラム国にはほぼ打撃はない
 バグダディ容疑者の殺害後にハシミ容疑者は最高幹部となったわけだが、それから3年、これまで同容疑者による具体的声明などは発信されておらず、実際はゴースト幹部だった。正体不明の最高幹部に対し、当時から活動しているイスラム国地域支部は忠誠を誓うという奇妙な現象も見られた。

 よって、ハシミ容疑者の死亡はイスラム国にほぼ打撃はない。アジアやアフリカで活動するイスラム国系組織は他人事のようにそれぞれ武装闘争を続けている。

 たとえば、アフガニスタンではタリバンが実権を奪還した昨年夏以降、タリバンや旧民主政権のなかからイスラム国ホラサン州に加わる動きもあり、テロが首都カブールを中心に各地で相次いでいる。イスラム国ホラサン州によるテロ事件は一昨年60件あまりだったが、昨年は300件を超えた。国連は今年2月、テロ情勢に関する最新のレポートを発表したが、そのなかでイスラム国ホラサン州がアフガニスタン国内で勢力を拡大し、その影響が中央アジアや南アジアに波及する恐れを指摘した。

 おそらく、新しい最高指導者も居場所やプロフィールなど詳しいことの多くはベールに隠され、ゴースト幹部として君臨することだろう。2度も最高幹部が米軍の掃討作戦で殺害されたことから、身を隠した活動を余儀なくされることだろう。

【関連記事】
カブール空港テロだけではない、依然続くイスラム国のテロ活動
IS新指導者サルビ氏、“理想郷”奪還を呼びかけるのか?
IS指導者バグダディ氏の死、「世界は安全」になったのか?

Text by 和田大樹