北朝鮮、なぜいまミサイル発射を繰り返すのか コロナで厳しい国内情勢のなか

北朝鮮ミサイル発射のテレビニュースを見る韓国ソウルの人々(1月25日)|Ahn Young-joon / AP Photo

◆異例のタイミングで発射、なぜ
 今年になって頻発に実験を行っている北朝鮮だが、なぜいまなのだろうか。英BBC(1月17日)は、通常は政治的なイベントや米韓合同演習に不快感を示す目的でミサイルが発射されるのに対し、今回のタイミングは異例だと述べている。

 その狙いはアメリカとの交渉力を確保する点にあるとみられる。北朝鮮は景気低迷に加え、食糧難にも悩まされている。コロナ対策で自ら国境を封鎖したことで、経済的に依存の強かった中国との貿易網が断ち切られている状態だ。NYT紙は、経済的に疲弊した北朝鮮がバイデン政権の関心を引きたがっていると推測する。北朝鮮はこのところ、大陸間弾道ミサイルではなく、より軽量で核兵器を搭載可能なミサイルの実験を進めている。同紙は「こうした種類の兵器はアメリカにとって直接の脅威となるものではないが、韓国や日本などアメリカの同盟国を核の脅威にさらすことで、金氏の対米的な影響力を高めることができる」と解説している。北朝鮮はミサイル実験を、アメリカを交渉のテーブルに着かせる武器として捉えているようだ。

◆国防維持の姿勢、国民に示す
 相次ぐ発射試験はまた、厳しい国内情勢にかかわらず国防は維持可能だという、国民へのメッセージでもある。カーネギー国際平和基金のアンキット・パンダ氏はBBCに対し、「金正恩はまた、国内も考慮しています。経済的に困難な時期におけるこれらの発射行為は、国防の優先順位が落後することはないとのメッセージを発信しているのです」と語る。なお、中国との物資輸送は近く再開する見込みとなっている。

 ロイターはアナリストの見解として、金正恩総書記が長期的にはミサイル部隊の創設を目指しているのではないか、とも報じている。中堅から若手までの科学者を特定の地区に隔離して開発に当たらせており、彼らの出身校である国防大学には最近、極超音速ミサイル技術に特化した学部が新設されたとの情報もある。

 北朝鮮の国内では過酷な状況が続くが、経済にかかわらずミサイル開発は加速しそうだ。

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Text by 青葉やまと