日豪が「歴史的」協定に署名、防衛協力を強化 中国「第三者を標的にしてはならない」

Pool Photo via AP

◆アメリカ依存からの脱却
 日豪が関係を強化する背景には、これまで地域の安全保障を担ってきたアメリカに過度に依存することへの問題意識がある。オーストラリア国立大学のジョン・ブラックスランド教授はブリスベン・タイムズ紙に対し、アジア太平洋地域の安定に引き続きアメリカが関与し続けるのかが不透明となっていると指摘する。日豪には互いの協力関係を打ち出すことで、アメリカの継続的な協力を引き出したいとの狙いがある。

 政治アナリストのグラント・ワイス氏は米外交誌『ディプロマット』(1月1日)への寄稿を通じ、現在日本が相互アクセス協定を締結しているのはアメリカとの間のみである、と指摘している。本協定によって日豪が「各々のアメリカとの同盟関係と並び、いまや両国が互いを安全保障上の主要な同盟国と捉えていることは明白である」との見解だ。日豪間の安全保障上のパートナーシップは過去10年間で着実に緊密化しており、本協定によってアメリカの介在に依らない体制づくりが前進したことになる。

◆中国は反発、「ことを荒立てるべきでない」
 アジア太平洋地域での具体的な脅威として想定されるのが、影響力を強めつつある中国の存在だ。ジェニングス氏はオーストラリアン紙への寄稿の中で、「(円滑化協定による)地域へのメッセージとしては、我々がただ北京の意向に震えあがり従うだけでなく、より良い選択肢があるということを示すものだ」と述べ、中国による支配に対抗する手段になり得ると評価している。

 一方で中国政府は日豪円滑化協定に際し、二国間条約はあくまで当事国同士の安定を目的とすべきであり、それ以外の国の利益に影響を与えるべきではないとの立場を示している。ロイターによると、中国外交部の王文彬報道官は、5日の定例記者会見の場で本条約に関するコメントを求められた際、「いかなる第三者の利益を標的とする、あるいは損なうことがあってはならない」とけん制した。

 さらにブルームバーグによると、同報道官は「太平洋は十分な広さがあり、皆が共存して発展できるだけのゆとりがある」とも述べている。報道官は、中国は人々が「ことを荒立てる」ことを望んでいないとも発言し、問題を起こしているのは日豪側であるとの考えを言外に滲ませた。

【関連記事】
豪が原潜建造へ、英米が協力 契約破棄された仏が不満表明
米中衝突に備えるオーストラリア 国防費拡大、インド太平洋に力点
日豪が「準軍事同盟」形成へ VFA締結目指す 中国紙は「平和への脅威」と非難

Text by 青葉やまと