懸念されるアフリカのテロ情勢 越境して勢力拡大するイスラム過激派

特殊部隊演習Flintlockに参加するマリの兵士(2019年2月)|US Africa Command / flickr

◆台頭する「イスラム国中央アフリカ州」
 近年、モザンビーク北部やコンゴ民主共和国東部ではイスラム国を支持する武装勢力「イスラム国中央アフリカ州(ISCAP)」が台頭し、軍・警察やキリスト教権益などを狙ったテロを繰り返し、とくにモザンビーク北部では現地で天然ガス開発に従事する外国企業の社員が退避する事態にもなった。

 それに加え、最近はウガンダで繰り返し発生したテロ事件で犯行声明を出すなど、これまでテロを起こしてこなかった周辺各国に勢力を拡大させる動きを見せている。ISCAPはモザンビーク北部に軍を派遣した国々を狙うなどの声明をたびたび出していたこともあり、コンゴ民主共和国とウガンダと国境を接し、対テロ作戦のためモザンビーク北部に軍を派遣したルワンダが次の標的になるとの見方を示す専門家もいる。

◆あらゆる問題がテロを悪化させる
 テロに特定の原因はない。経済格差、貧困はもちろん、軍警察の能力もそうだろう。これらはこれまでもアフリカ地域で大きな課題であったが、今後のテロ情勢で心配される現象に地球温暖化と人口爆発があると思われる。イスラム過激派が豊富な資金で現地の若者たちをリクルートしているように、急激な人口増加によって若い世代の経済格差が広がり、職を求める若者が増加する恐れがある。また、アフリカのチャド湖が枯渇し、漁業を営んでいた現地住民が職を失い、イスラム過激派ボコハラムにリクルートされたように、地球温暖化が経済状況を悪化させ、それがテロ組織の拡大に繋がる恐れも指摘される。こういった背景がISGSやJNIM、ISCAPの拡大にもある。

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Text by 和田大樹