アフリカ人の63%、中国の影響に肯定的 中国のソフトパワー戦略とは?

中国港湾工程が参加したナミビアのウォルビスベイ港開発|Roger Brown Photography / Shutterstock.com

◆中国のソフトパワー強化戦略
 中国はアフリカに対しての投資、融資、援助を拡大するだけでなく、さまざまな形でソフトパワーの強化を図っている。米国ジョージア州立大学の助教授で、中国政治の研究者であるマリア・レプニコヴァ(Maria Repnikova)は、シンクタンクであるウィルソン・センターのフェローとして、米国の陰で、アフリカにおける中国のソフトパワーが強化されている点について研究している。彼女の報告によると、欧米メディアなどの影響で形成された中国に対する否定的もしくは懐疑的なナラティブを覆すため、中国はさまざまな形で投資しているという。たとえば、アフリカのエリートを自国に招待し、中国がいかに優れているかということを伝えるようなトレーニング・プログラムの実施。完全無料招待の待遇だ。その内容は、必ずしも専制的な政治システムを布教するようなものではなく、中国的な「民主主義」を伝えるようなものであるとレプニコヴァは解説する。また、エリートだけでなく、中国は毎年約8万人のアフリカ人学生を自国に受け入れている(米国は約4万人、日本は2千人強)。また、アフリカ全土では62の孔子学院(Confucius Institute)が設立され、中国語教育が展開されている。さらに中国国営の中国中央テレビ(CCTV)は2012年、ケニアにアフリカ総局を開局し、アフリカ各地に英語番組を配信している。

 中国は、抽象的な価値観や自由民主主義の理想といったイデオロギーでアプローチする米国とは対照的に、教育面・文化面における具体的な施策によってソフトパワーの強化を図っている。一方で、政治システムや開発モデルに関しては、トレーニングに参加したエリートたちも(公には口にしないものの)懐疑的な見方を持っているとレプニコヴァは言う。まさにアフロバロメーターの調査結果にも表れているが、短期的かつ実利的な中国の介入を歓迎しつつ、長期的には米国のような自由民主主国家を目指したいというのが、アフリカ人の本音なのかもしれない。

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Text by MAKI NAKATA