米中のはざまで難局を迎える東南アジア

中国とASEANの対話関係開始30周年を記念して開かれた首脳協議(22日)|Malaysia Prime Minister office via AP

◆インド洋と太平洋に挟まれる東南アジア
 また、米中対立のなか、東南アジアが難しい舵取りを余儀なくされる理由はその地政学的位置もある。米国や日本は「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、クアッドなどその動きを本格的に始動しているが、東南アジアはまさにインド洋と太平洋の真ん中に位置しており、主要国間の競争が展開される要衝にある。また、今後アジアの世界経済のハブ化はいっそう進むことから、英国など欧州もインド太平洋への関与を強めており、政治と経済の両面で東南アジアの重要性がますます高まることだろう。

 現在の世界情勢をみれば、中国と欧米の対立は深まっており、東南アジアを舞台とした米中の競争は激しくなる可能性がある。上述したように、東南アジア各国によって中国への姿勢は大きく異なっており、それによって東南アジア諸国連合(ASEAN)の一体性というものが揺らいでくることも考えられる。

 日本経済にとっても東南アジアの重要性は高まるばかりであるが、今後はどの国がどういう外交姿勢をとっていくかをいままで以上に注視していく必要がある。

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Text by 和田大樹