アフガン撤退、バイデン大統領が批判・支持される理由

Manuel Balce Ceneta / AP Photo

◆バイデン大統領の決断を支持する見方
 一方、支持率は低下しているが、それを支持する見方もある。今回、タリバンがあっという間に政権奪取したことで批判の声が強まっているが、それ以前は支持の方が優勢だったといえる。その最たる理由は、終わりの見えない戦争への疲労といら立ちだ。バイデン大統領は長年アフガニスタンからの撤退を求めてきたが、それに対する国民の支持は強く、今回バイデン大統領がそう決断した背景には、来年の中間選挙も見据え、支持率の維持・拡大もあったはずだ。

 また、「これ以上米兵を他国で死なせられない」「アフガニスタンの軍隊が一生懸命やらないのになぜ米国が必死になるのか」という考えへの支持がある。確かに、国家の運営や発展をどう進めるかを決める権利があるのはその国民であるが、その分責任も伴う。米国はこれまで多大なマネーをアフガン政策につぎ込んできたが、思うような成果が出なかったのは今回の政権奪取で明らかになり、終わりの見えないことには歯止めをかけるというのが、今回のバイデン大統領の決断の背景にある。

 バイデン大統領は中国に対抗していく姿勢を鮮明にしている。今回の決断には、米国の本気度を中国に示す狙いもあったことだろう。中国への強い懸念を持つ人々の間では、今回の決断を支持する、もしくは致し方ないとする声が意外に多いのではないだろうか。

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Text by 和田大樹