米中対立のなか日本はどう生き残るか

Andrew Harnik / AP Photo

◆非常に難しい日本の立ち位置
 こうなってくると、日本は非常に難しい立場に追いやられている。だが、米中対立のなかでの日本のスタンスは変わらないし、変えることはできない。安全保障上、日本は日米同盟を基軸とし、外交でも米国と協調・協力していく立場は変わらないことから、そのなかでいかに中国と向き合うかしか選択肢はない。しかし、米中対立がいかに激しくなっても、日本経済の対中依存度を考慮すれば中国とのデカップリングは不可能に近く、両方との関係を維持するしかない。

 そのようななかで、経済安全保障の視点も考慮し、一つのオプションを提示するのであれば、日系企業の対中リスクヘッジとASEANへのシフトがある。おそらく、米中対立のなかで日中関係が悪化すれば、まず被害に巻き込まれるのは経済アクターであろう。中国にとっても、尖閣周辺での砲撃など軍事的な威嚇を示すより、輸出入制限や関税引き上げ、不買運動などの経済的な威嚇の方がハードルはずっと低い。

 日系企業としては、リスクや損益を最小化すべく、第三国(たとえば市場を考えるとベトナムやタイ、インドネシアなど)に移せる部分は移し、リスクヘッジを事前にする、もしくはその用意をしていくことは戦略的に重要なオプションであろう。

 企業にとって中国市場の意味や価値は異なることから、筆者も大きなことが言えるわけではない。しかし、今後想定されるリスクを十分に理解し、危機回避的な行動をとっておくことは非常に重要であろう。

【関連記事】
ワクチン外交で台湾潰しの可能性も 中台対立のもう一つの側面
「中国が6年以内に侵攻」台湾有事と日本の安全保障
武器使用を明文化 海警法施行で緊張高まる尖閣情勢

Text by 和田大樹