原発処理水の海洋放出、海外はどう報じた? 解決へのヒントも

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◆広報活動、検証、国際機関との連携。政府、東電に求められること
 事故から10年を経たいまでも、処理水の問題の解決は難しいという見方が大半だが、いくつかの記事に解決へのヒントが読み取れる。

 AFPは、食品中の放射性物質については、日本は1キロあたり100ベクレル以下という欧米より厳しい基準を設けており、福島の農産物については消費者の信頼を得るためさらに低い50ベクレルに設定されていると説明する。海洋放出後も食の安全は守られるはずだが、「政府のメッセージが市民に届いていないことが大きな問題」という福島漁連の関係者の言葉を紹介している。風評被害を広げないため、これまで以上に安全性についての広報活動が必須であることを示している。

 海洋放出される水にトリチウム以外の危険な物質が混ざっている、また混ざるのではないかという意見に対し、政府は規制基準を満たすように再浄化するとしている。東京大学の乙坂重嘉教授は、海洋の堆積物に同位体が蓄積され生物に拾われる可能性は限られているとはいえ適切に評価すべきとしており、東電が処理性能を長期間維持できるか検証する必要があるとしている(サイエンス誌)。東電は海洋放出発表に際し、信頼回復に努めるとしているが、そのためには適切な検証とそれに関する情報の発信も大切だろう。

 WNNは、日本がIAEAに国際専門家団の派遣や、現地での環境モニタリング作業の支援を要請したことにも触れ、IAEAの協力と関与が、国内外での信頼の構築に役立つというグロッシ事務局長の意見を紹介している。IAEAを巻き込んで、透明性をもって今後の作業状況を報告することが、近隣諸国からの批判をかわすことには有効だろう。

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Text by 山川 真智子