IAEA、汚染水放出を提言 福島の状況は“大きく改善”も、避難者生活改善など求める

 IAEA(国際原子力機関)の調査団が、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業を検証する9日間の訪問を終え、仮報告書をまとめた。17日の記者会見で、調査団長は、事故処理における日本の努力に満足の意を表明。また、汚染水を浄化した後、海に放出することも提案した。

◆事態は依然厳しいが、着実に改善
 IAEAによる廃炉作業に関する実地アセスメントは、2013年から行われており、今回で3回目となる。15人のメンバーを率いた調査団長のレンティッホ氏は、「日本は一歩一歩進んでおり、計画は形を成してきた。これは歓迎すべき進歩だ」と発言(ワールド・ニュークリア・ニュース、以下WNN)。原発付近の多くの地域における放射線レベルをかなり低下させたこと、4号機使用済燃料プールからの燃料取り出し作業の完了、原子炉建屋周辺での地下水バイパスの部分的成功を評価した(ドイチェ・ヴェレ、以下DW)。

 しかし、「状況は大変複雑なまま」であることも、レンティッホ氏は指摘。増え続ける汚染水に関しては、持続可能な方法で解決しなければならない短期的課題と述べ、メルトダウンを起こした原子炉からの燃料やがれきの取り出しは、長期に渡る大変困難な課題だという認識を示した(WNN)。

◆海洋放出は現実的な解決策
 東電の資料によれば、福島第一では、1 日あたり約300トンの地下水が建屋に流入し、汚染水となっている(地下水バイパス前から100トン減少)。汚染水は、敷地内のタンクに貯留しているが、浄化設備による処理が進んでおり、汚染水の処理量(累積処理水貯蔵量)は、2014年12月で約24.5 万㎥となった。

 DWは、今の技術ではトリチウムは取り除けないものの、浄化システムにより、それ以外のすべての放射性同位元素を取り除くことができると解説。IAEAの専門家たちが、処理水の海洋放出を勧めていると報じた。

 レンティッホ氏も、「ほとんどの原発では処理水は放出する」と説明し、トリチウムを含んだ汚染水の海洋放出が「環境と人体に与える影響はわずか」と指摘。さらに、毎日増える汚染水のために、タンクを作り維持することは、7000人の作業員にとってひどく骨が折れる作業だとも述べた(ロサンゼルス・タイムズ紙、以下LAT)。

 日本の原子力規制委も海洋放出がベストな解決だと考えているが、地元の漁業関係者からの理解が得られず、東電も批判を恐れて貯留を選んでいる(DW)。しかし、1月に汚染水のタンクを検査中の作業員が落下して死亡。この事故を受けて、規制委は、処理後の汚染水の海洋放出に向けて動くことを東電に求めたと、LATは報じている。

◆避難者の現状にも配慮
 DWによれば、IAEA調査団は、避難者の安全な帰還とともに、原発近郊での生活環境の改善も求めている。原発から半径20キロ圏内に設定されていた警戒区域(現在は解除)に住んでいた住民7万2500人以上が、いまだに仮設住宅で暮らしている。朝日新聞が最近おこなった調査では、回答者の73%が福島の事故への関心は薄れたと答えたと言う。DWは、福島以外の日本では、避難者のことなど忘れられたかのようだと述べて、事故の記憶の風化を危惧している。

Text by NewSphere 編集部