原発処理水の海洋放出、海外はどう報じた? 解決へのヒントも

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◆漁業者、環境活動家は反対 近隣諸国も厳しい目
 福島第一原発の廃水は62種の放射性物質を除去できる多核種除去設備(ALPS)で処理されている。トリチウムを除去できないことが問題視されているが、政府は、放出の際には十分に薄めてトリチウムの濃度を下げ、国際的な安全ガイドラインを下回るレベルにするとしている。しかし、人や環境への脅威にはならないとする政府の説明にもかかわらず、今回の決定は漁業関係者、環境保護団体、近隣諸国から批判されている。

 米公共ラジオ網NPRは、菅首相から理解を求められた全漁連の岸会長が、容認できないと述べたと伝えた。さらに福島の水揚げ量は震災前の17.5%に留まり、多くの漁師が東電からの賠償金で生活していると説明。政府の決定で魚が売れなくなれば、漁業界が壊滅的打撃を受けるという見方を報じている。

 処理水にはトリチウム以外の放射性物質が含まれていたが、東電や政府がその情報を事前に開示しなかったという国際環境NGOのFoEジャパンの運動家の批判もNPRは紹介している。AFPによれば、環境保護団体グリーンピースも、炭素14のような炭素の放射性同位体が処理水に残り、食物連鎖で濃縮され、DNAにダメージを与えると主張しているという。

 処理水の海洋放出に対し、韓国と中国、さらにロシアや台湾まで「重大な懸念」を表明していると各紙伝えている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、中国の場合はアメリカが日本の決定に理解を示したことも影響したとしており、米中対立が状況を複雑にしていると見ている。

Text by 山川 真智子