大陸を渡るサハラの砂に放射性物質 60年前のフランスの核実験

サハラ砂漠から飛来するアルジェ上空の砂塵(2月21日)|Fateh Guidoum / AP Photo

 今年2月、ヨーロッパにはサハラ砂漠から多くの砂が飛来し、オレンジ色の街並みにバラ色のスキー場など、多くの画像がネットを賑わせた。だが、このサハラの黄砂がもたらしたのは、珍しい光景だけではない。PM10による大気汚染とともに、放射性物質であるセシウム137まで運んできたのだ。これは約60年前のフランスの行為を原因とするものだ。

◆北極からアマゾンまで届くサハラの砂
 北アフリカの熱い空気がサハラの砂を北部まで運ぶ現象は新しいものではない。北上した砂粒は水滴とともに落ちるが、この水滴が大きければ砂を洗い流すため、人目につくことが少ない。しかし、「水滴が小さく少なければ(中略)、落ちたあと蒸発するので、(運ばれてきた砂が)よく見える」のだ(Europe1)。この2月はこういった条件が整う期間が2回あり、上旬と下旬にバラ色の光景があちこちに出現した。


 気象サイト『メテオ・パリ』(2/20)によれば、この現象は昨日今日のものではなく、1930年11月27、28日にもパリやベネルクスで観察されている。また、時にはさらに北まで届くことがあり、グリーンランドや北極にさえ痕跡が残っているという。

 サハラの砂は北上するだけではなく、しばしば大西洋を渡って南アメリカに飛来する。そのおかげで、砂に含まれるリンがアマゾン熱帯雨林に注がれ、肥料の役目を果たしている。メリーランド大学の研究(2015年)によれば、その量は毎年2万2000トン以上だという。

Text by 冠ゆき