アメリカのイエメン内戦への軍事支援停止、その影響は?

AP Photo / Nariman El-Mofty

 アメリカのバイデン大統領は、イエメンの反政府勢力であるフーシ派との紛争のために、サウジアラビア主導の連合軍に提供してきた長年にわたる軍事支援を停止すると発表した。これにより、軍事作戦の終結に向けてサウジへの圧力が高まることになるだろう。しかし、アラブ諸国の中で最も貧しい国、イエメンでの和平維持には依然として課題が残されている。

 イランからの支援を受ける反政府勢力のフーシ派は北部地域に勢力を確保し、首都サヌアも押さえている。ほかの地域については2015年から内戦状態にあり、サウジ連合軍からの支援を受ける部族、地域、政治的な同盟勢力が支配している。

 国連、欧米・近隣諸国が、すべての当事者に受け入れが可能な権限分割の政治的合意に解決策を見出そうとしているなか、国内の各勢力がどのように対応するかが鍵を握ることになるだろう。イエメンの長年にわたる紛争の歴史からすると、どのような取引であれ合意にいたる道のりは険しく、それを維持するのはさらに困難であるとみられる。

◆イエメン内戦の当事者、そして血なまぐさい紛争が続く理由
 イエメンでは2014年9月に内戦の火ぶたが切られた。このときフーシ派が首都サヌアを占拠し、全土の掌握を目指して南下を開始した。サウジは2015年3月、アラブ首長国連邦(UAE)などとともに、国際的な承認を得ているイエメン政府側に立って参戦した。

 非政府組織「Armed Conflict Location and Event Data Project」によると、内戦により標的型攻撃で命を落とした1万3000人以上の民間人を含む約13万人が犠牲となった。開戦以降、5歳未満の乳幼児8万5000人が飢餓か病気で亡くなったと国際援助団体(NGO)のセーブ・ザ・チルドレンは試算している。一方、イエメンの医療体制が戦争によって崩壊し、フーシ派は健康被害に関する情報を統制しているために新型コロナウイルスの感染状況は確認されていない。

 内戦ではありとあらゆる残虐行為がみられた。アメリカ製爆弾を使ったサウジの空爆により多くの生徒や民間人が犠牲となった。UAEは紛争回避のために現地のアルカイダ勢力と裏取引したほか、拷問や性的虐待が横行していた刑務所を支配下に置いた。フーシ派は少年兵を雇い、地雷を無差別に埋設している。

◆イエメンが内戦状態にある理由
 アラビア半島の南端に位置するイエメンは、冷戦期に社会主義国家の南イエメンと共和国的な北イエメンに分裂していた。1990年に両国が統一されてイエメン共和国となったが、1994年には内戦が勃発した。その後、国内で無数の部族、武装集団、仲間を統治する様を「ヘビの頭上での踊り」と例えた絶対的指導者、アリー・アブドッラー・サーレハ氏が支配することになった。

 10年前に「アラブの春」の抗議運動が起きると、サーレハ氏は力を失い始めた。最終的には、副大統領のアブド・ラッボ・マンスール・ハディ氏にその地位を譲ることに同意した。ハディ政権は国内統治に苦しみ、返り咲きの機会をうかがっていたサーレハ氏は、自ら率いる軍隊を大統領時代に敵対関係にあったフーシ派につかせ、2014年に首都に入った。サーレハ氏は再びハディ氏側に鞍替えしようとしたものの、フーシ派により2017年に銃殺されてしまい、ここで彼の命運は尽きた。

 ライバルであるサウジとの消耗戦に協力する機会をうかがっていたイランはフーシ派を支援した。アラブや欧米の国々、国連の専門家らによると、イランは攻撃用ライフルから弾道ミサイルまで、ありとあらゆる兵器をフーシ派に提供した(証拠があるにもかかわらず、イラン政府は長い間これを認めていない)。サウジと湾岸同盟諸国が恐れているのは、フーシ派の勢力が増してレバノンのシーア派組織ヒズボラのようになることである。フーシ派はすでに、サウジ一帯でドローンとミサイルによる攻撃を仕掛けている。

 その間、イエメン特有の貧困、水不足の問題が続き、資源状態も悪化している。内戦はただ悲惨な状況をさらに悪化させただけで、2900万の国民は飢餓状態の瀬戸際にある。

◆アメリカが関与する理由
 イエメン内戦には、アメリカが直接関与しているという別の対立軸が見え隠れする。アメリカは2001年9月11日の同時多発テロを実行した武装勢力の中でもっとも危険な分子だとみられる、アラビア半島のアルカイダを標的としている。アルカイダの勢力は2000年、イエメン南部のアデン港に停泊していたアメリカのミサイル駆逐艦コールに攻撃を仕掛け、17人の船員を死亡させた。

 ワシントンを本拠とするニュー・アメリカ財団によると、ジョージ・W・ブッシュ以降歴代のアメリカ大統領はイエメンでドローンによる空爆を行い、少なくとも115人の民間人を含む1300人超の命を奪った。サーレハ政権下、アメリカはイエメンで軍事作戦を展開したが、後に撤退した。トランプ大統領の政権初期には、アメリカ海軍特殊部隊の隊員、アルカイダ兵、民間人の命を奪った奇襲攻撃を含め、アメリカの特殊部隊がイエメンに配備されていた。

 同時にアメリカはサウジに爆弾と戦闘機を売却しており、それがサウジのイエメン攻撃に使用されて民間人も犠牲になった。オバマ政権は2015年当時、空爆での民間人の犠牲を最小限に抑えるとしていたサウジの指揮統制に対してアメリカの標的支援を提供していた。しかし実態が異なっていたため、オバマ大統領は最終的にこの支援を打ち切った。トランプ政権下で支援は継続されたが、後にサウジ軍機に対する給油措置を停止した。

 アメリカはほかにも、2019年にドローンによるミサイル攻撃によってサウジの原油生産が一時的に半減するほどの被害を受けた後、サウジに軍隊を配備した。この攻撃についてはフーシ派が犯行声明を出したものの、イエメン、アメリカ、国連の専門家たちはイランが実行したと考えている。バイデン大統領は、サウジがその主権、国土の統一性、国民を保護することができるよう引き続き支援していくと強調していた。

◆戦争終結の見込み
 バイデン大統領による今回の支援停止の発表は、イエメンでの共同軍事作戦の終結に向けてサウジに新たな圧力をかける動きになりそうだ。UAEは2019年に地上軍を撤退させ、和平交渉による紛争解決を呼びかけてきた。サウジの副国防大臣でサルマーン国王の子息でもあるハーリド・ビン・サルマーン氏はツイッターへの投稿で、サウジはイエメンでの「持続可能な政治的解決の実現」に向けて取り組みたいと述べている。戦争は父である国王だけでなく、兄のムハンマド・ビン・サルマーン氏にとっても負担が重い、血まみれの膠着状態であった。

 しかしながら、これまでの国連主導による取り組みでは紛争を解決するにはいたっていない。その間、UAEに近い分離独立派は、サウジ連合軍側の勢力に公然と攻撃を加えた。サウジ主導の連合軍とフーシ派で交わされる和平がどのようなものになろうと、イエメンは将来、再び分裂の憂き目を見る可能性がある。

By JON GAMBRELL Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP

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