米軍の対テロ戦からの縮小・撤退がもたらすリスク

イラクで任務に就く米兵(3月27日)|Ali Abdul Hassan / AP Photo

◆軍事的支援だけではテロはなくならない
 国際社会の関与が薄まってしまうと、現地の治安情勢が悪化し、貧困や失業、経済格差などの社会経済的問題も深刻化し、一部の若者がテロの世界に入ってしまう恐れがある。米軍による治安当局の訓練や支援は、現地の治安を守るうえで大きな役割を果たしてきたが、それだけではテロはなくならない。貧困や失業などで孤独感や疎外感、社会への不満・怒りを持ち始めた若者と、ISなどが掲げる暴力的な過激主義をどう結合させないかが重要となる。

◆米軍縮小・撤退をテロ組織はどうみるのか
 そして、米軍縮小・撤退における最大の問題は、それがテロ組織に与える影響である。これには二つの影響が内在する。一つは能力面の影響で、すなわち、米軍の縮小・撤退によって現地の治安当局への訓練や支援が疎かになり、テロ組織とのパワーバランスが徐々に崩れはじめ、テロ組織優位の情勢に転換し、テロ組織の活動が活発化することである。もう一つは、能力面とも関係するが、士気面の影響である。すなわち、米軍縮小・撤退という一つの大きな政治的転換によって、テロ組織のモチベーションが一気に上がり、それによってテロ情勢が急激に悪化することだ。

 この考え方に照らすと、アフガンのタリバン(強硬派)やアルカイダ、イラクのISやソマリアのアルシャバブなどの活動が、米軍縮小・撤退という政治的転換によって、自然にもしくは意図的に活発化し、現地の治安情勢がさらに悪化することも考えられるのだ。

【関連記事】
米軍と武装勢力が報復合戦 依然として続く米イラン危機
アルカイダは本当に衰退したのか?
行き詰まった在韓米軍負担問題、縮小・撤退の可能性も 日本にとっても試金石

Text by 和田大樹