中国にとっての小笠原諸島の地政学的意味とは

出典:海上保安庁ホームページ

 7月9日から10日にかけ、日本の最南端沖ノ鳥島付近の排他的経済水域で、中国の海洋調査船が海中にワイヤーのようなものを下ろし、海洋調査を行っている様子を海上保安庁の巡視船が発見した。これについて日本政府は事前に許可を出しておらず、外務省は中国大使館に抗議した。また、河野防衛大臣は同月11日、日本最東端の南鳥島を訪問した。防衛大臣が同島を訪問するのは2014年の小野寺氏以来で、海洋進出を活発化させる中国をけん制する狙いがある。

◆中国船による小笠原海域でのサンゴ違法密漁
 中国による小笠原諸島周辺での活動は今回が初めてではない。たとえば、2014年9月中旬頃、父島や母島の近海では中国船によるサンゴの違法密漁が明らかになり、10月中旬まで1日に発見される船は30〜50隻だったが、同月下旬から11月中旬にかけては1日190〜200隻あたり発見されるなど、中国船によるサンゴの密漁が大きな問題となった。小笠原周辺海域で獲られたサンゴは、中国国内では非常に高値で取引されることから、2014年の問題の背景には経済的理由が強かった。しかし、中国海警と海軍の一体化など、武装漁船や武装商船を含め、海洋活動の融合が進むとみられるなかでは、小笠原諸島の離島防衛も本格的に行動に移していくべきだろう。

Text by 和田大樹