中国の内海化戦略は活発化するのか コロナも利用する長期ビジョン

中国海軍の空母「遼寧」|Baycrest / Wikimedia Commons

 新型コロナウイルスの拡大感染によって、南シナ海や東シナ海での中国の活動が活発になり、海洋秩序をめぐる覇権争いがいっそう激化するのか。中国のそのような動きは、当然ながら新型コロナウイルスの感染が拡大する前から日常的に起こっている。しかし重要なのは、新型コロナウイルスの感染拡大が政治的隙を生じさせるかどうかである。

◆中国の内海と化す南シナ海
 習近政権は4月、2012年に南シナ海の諸島を管轄するために設けた海南省三沙市に、行政区として「西沙区」と「南沙区」を新設し、南シナ海の島やサンゴ礁、海底地形などを含む計80ヶ所の名前を発表した。これに対し、同海域の領有権を主張するベトナムは主権を著しく侵害すると強く反発した。だが、4月には西沙諸島で中国の巡視船がベトナムの漁船を沈没させる事故が発生し、マレーシア近海では中国の調査船がマレーシアの国営石油会社の探査船を追尾するなど、中国と周辺国との緊張が高まっている。

 そして、今年に入り、米軍機は昨年の3倍以上となる39回にわたって南シナ海周辺の上空を飛行し、うち2回は香港付近を通過した。米軍機が香港付近を通過する目的は、中国により強い警告を与えることにある。また、米国は、中国が造成した人工島の12海里内にイージス駆逐艦を派遣する「航行の自由作戦」を今年に入って既に4回実施しており、昨年は通年で8回だったことから、米国の懸念の度合いは明らかに高まっている。

 中国人民解放軍は8月、台湾と領有権を争う東沙諸島を支配下に置くことを想定した大規模な上陸訓練を予定しているという。台湾の沿岸警備部も、東沙諸島の駐屯地で6月に定例の実弾射撃訓練を実施すると発表しており、中台関係の行方も懸念される。

Text by 和田大樹