トランプ氏にうまく取り入る日本 新天皇即位、ファーストレディ誕生日も利用

AP Photo / Koji Sasahara, Pool

 アジアに親しい友人が少ない日本の安倍首相は、あらゆる機会(新天皇の即位さえも)を利用して、トランプ大統領のご機嫌取りをしているようにみえる。
 
 日米両国による19日の発表によると、安倍首相はトランプ大統領との会談、ファーストレディの誕生祝いのためにワシントンDCを急ぎ訪問する。その後、新天皇即位後の初の国賓として大統領を迎えようとしている。

 また、トランプ大統領夫妻は、皇太子さまが即位されてから数週間後の5月末に日本を公式訪問するという。85歳になられる天皇陛下は4月30日に退位されて30年に及ぶ治世を終える。
 
 新天皇即位後の初の国賓としてトランプ大統領を迎えることが「日米の揺るぎない関係を象徴する」ものになるだろうと菅官房長官は述べている。

 日本の外交当局では、大統領が5月26日の大相撲千秋楽を観覧できるよう調整を進めており、大統領から優勝力士に賜杯が贈られることになる。日本の政府高官やメディアの報道によると、大統領は横須賀基地も訪れ、戦後初の空母として日本に再配備が予定されている駆逐艦を見学するほか、安倍首相と一緒にゴルフをプレーする可能性もある。

 専門家は、安倍首相はあらゆる機会を活用してトランプ大統領のご機嫌取りをしていると言う。他国のリーダーたちが貿易その他の問題で大統領の機嫌を損ねているのとは異なり、日本が標的にならないようにしているのだ。

「日本のどの政権であっても、一対一のやり取りでアメリカとこの上ない良好な関係を構築すること以外、選択肢はないだろう」と国際基督教大学で政治・国際関係学の教授を務めるスティーブン・ナギ氏は語る。「新天皇に初めて会う国賓がトランプ氏であることが、それを物語っていると思う」と言う。

 日本では、戦争の歴史と領土問題をめぐって、隣国の韓国および中国との緊張関係がいまだに続いている。

 トランプ大統領は2月、北朝鮮を非核化する取り組みで安倍首相が自分をノーベル平和賞に推薦してくれたと発言している。首相自身はこれを否定しなかったため、野党議員からはトランプ大統領を喜ばせようとする首相の言動には困りものだと非難された。

 アメリカの指導者に対する批判を入念に回避することで、安倍首相はトランプ政権と概ね良好な関係を保ってきた。「日本に対する批判を耳にすることがまったくない。これは安倍政権に特徴的なことだ」とナギ教授は話している。「問題の引き金となるようなトランプ大統領への攻撃をしないことが、うまくいっている理由なのだろう」と言う。

 安倍首相は、外交上の慣例であった正式な就任を待つことすらせずに、2016年11月の大統領選挙で勝利したトランプ氏と初めて会談したリーダーとなった。また、特別にゴルフのドライバーを贈っていた。

 青山学院大学で国際問題の教授を務め、日米関係の専門家でもある会田弘継氏によると、トランプ大統領は貿易問題において日本に強硬姿勢で臨み、貿易不均衡を改善するために多くの要求を突きつけたため、日米関係は弱体化しているとみられた。そこで、安倍首相は天皇即位という絶好の機会を見逃さなかった。

「首相にとって、新天皇との会見で5月にトランプ大統領を招待するのは、大統領をいかに重視しているかを示すこの上ない機会であるほか、世界に向け両者の関係を示すことにもなる」と会田教授は話している。

 天皇の会見相手を選定できるというメッセージを発信することで、首相は新天皇に対する政治的な影響力を示すことになるかもしれない。ところが、トランプ政権とロシアとの関係をめぐる疑惑の調査が続いている最中に、大統領を選ぶことで新天皇のイメージに傷がついてしまう可能性があるとも教授は話している。

 新天皇即位というあわただしい時期を目前に控えた4月26~27日に、安倍首相は訪米する。おもに経済と貿易について話し合いをするG20サミットが6月に大阪で開催されることから、首相と大統領は3ヶ月連続で顔を合わせることになる。

 ホワイトハウスは19日、両首脳が今月の会談で北朝鮮の核軍縮、貿易その他の問題について話し合う予定だとコメントしている。ホワイトハウスでの会談後、首相夫妻は米ファーストレディの49回目の誕生日を祝うために開かれる大統領夫妻との非公式の夕食会に参加する。これまで同様、その翌日にはワシントン郊外でともにゴルフをプレーするとみられている。

By MARI YAMAGUCHI Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP