イタリアの「一帯一路」参加が示す2つの意味 好機を手にする中国

Francois Mori / AP Photo

◆G7の切り崩しを狙う中国
 また、イタリアの一帯一路参加はもう一つの重要な意味を持つ。周知のとおり、G7とは米国と日本、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリアの先進7ヶ国が参加する政治集合体で、戦後の世界経済を主導してきた。よって、21世紀以降、世界経済で影響力を高める中国からすると、G7の1ヶ国を自らの経済ルールに参加させることに漕ぎ着け、また、G7の領域に初めてメスを入れることに成功したという意味で、イタリアの参加は大きな意味を持つ。国際政治的にも大きな出来事である。今後、あからさまには表明しないまでも、“無言で”G7の切り崩しにかかってくるかもしれない。

 仮にそうであれば、おそらく英国、フランス、ドイツが次の標的になるだろう。トランプ政権の誕生以降、米国とフランス・ドイツの関係は最悪レベルに冷え込み、英国はブレグジットで余裕がない。今日、EUもG7もそれぞれ内部に内戦たるものを抱えており、中国にとっては欧米先進国の主要な政治的枠組みを切り崩して行くチャンスでもある。

 近年、北京自身も一帯一路構想の実施拡大によって、各地域や各国から抵抗と反発の声が顕著に出ているのは十分に承知のはずだ。しかし、だからといって中国が経済支援を停止することはなく、中国の影響力拡大を続けることだろう。

 イタリアの一帯一路参加について、当然ながら、G7の国々からは懸念の声が出ている。しかし、今日、G7の影響力は以前より相対的に低下しており、G20や上海協力機構、ブリックス(BRICs)など新興国を取り込んだ政治的枠組みが影響力を増している。G7が一帯一路構想によってさらに切り崩されていくならば、米国や日本にとってどんな影響が出てくるのだろうか。フランスやドイツも、現在の米国との関係も影響してか、対中国では難しい舵取りを余儀なくされている。日本にとっても、決して対岸の火事ではない。

Text by 和田大樹