ロシア、極超音速新兵器「アバンガルド」配備へ プーチン氏「迎撃は不可能」
◆アジア不安定化の懸念も
これらのロシアの「恐るべき新兵器」は、ソビエト連邦時代の超大国の地位を懐かしむ国民に向けた回答であると同時に、対外的には、アメリカと軍事的に対等な地位につき、外交交渉などを優位に進めるツールとして利用されると見られている。WPは、トランプ大統領が短・中距離核兵器の保有を制限するINF条約からの脱退を宣言していることも、ロシアの対抗意識に拍車をかけていると分析する。
プーチン大統領は、「アバンガルド」や「ジルコン」を手にしたことで、アメリカと全面核戦争をしても互角かそれ以上になったと自信を深めているようだ。では、アメリカ側から見て、実際のところはどうなのか? ワシントン・エグザミナー誌は社説で、プーチン氏の自信は「半分しか正しくない」としている。アメリカも超音速兵器の開発に取り組むなか、「アバンガルド」は確かに「それを凌ぐ印象的な計画だ」と同誌は書く。しかし、ロシア軍は、ミサイル管制システムや兵站、ミサイルを運用する艦艇や航空機の性能、軍組織の統率力などを見ても、総合的には米軍に劣るという見方だ。
「ポピュラー・メカニクス」も、「ジルコン」を撃ち落とすには、米軍のシステムのハード・ソフト両面の大きな技術革新が必要だと危機感を強める一方、現状で有効な対抗策はミサイルが発射される前に、運用する基地や艦船・航空機を破壊することだとしている。ひとたび超音速ミサイルが発射されれば、迎撃の決断に許された時間はたった数秒だ。いずれにせよ、アメリカの同盟国の日本にとっても、大きな脅威が誕生したのは間違いない。中国も超音速兵器の開発に熱心だと報じられるなか、核抑止力のバランスが崩れる危険が増している。
「ワシントンは、数秒以内に目標を叩くことができる自在に操作可能なミサイルの台頭により、ヨーロッパとアジアの一部が不安定化すると懸念している」(WP)