空軍、戦車、化学兵器……近代戦の礎となった第1次世界大戦 終結100年

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◆騎兵に代わる陸の主役「戦車」
 電撃戦の主役となった戦車は、第1次世界大戦でイギリス軍が初めて用いた。機関銃弾に耐えられる装甲を備え、無限軌道(履帯・キャタピラ)によって塹壕を乗り越えることができる戦車は、膠着した戦線を破る秘密兵器として期待された。当初は故障の頻発や排気ガスや熱気による乗員への被害、大砲の攻撃には耐えられないなどの問題点が多かったが、両陣営が改良を加えた戦車を競うように導入した結果、しだいに実用的な兵器となっていった。

 カナダ誌マクリーンズは、戦車の登場は、それまでの機動戦の主役だった騎兵部隊を終焉させたという視点で、第1次世界大戦の戦車の登場を捉えている。同誌は、「至る所に敵の機関銃があった。しかし、我々にとって幸運だったのは、戦車部隊がそれらを間もなく沈黙させたことだ。戦車がなかったら、絶望的な任務になったことだろう」という、1918年8月8日のアミアンの戦いに参加したカナダ軍兵士の言葉を紹介している。この戦闘には、343両の英国製マークV戦車が参加した。

 翻って、お互いの領土に陸軍の大部隊を侵攻させる国家間の全面戦争が起きにくくなった現代では、戦車が大量に運用される機会は稀になっている。戦車は依然として各国の陸軍の主役ではあるが、第1次世界大戦の騎兵部隊を自らが駆逐したように、戦車を主役から引きずり下ろす新たな兵器が出てくる日は、そう遠くないかもしれない。

◆化学兵器の根絶はいまだ達成されず
 多くの識者が第1次世界大戦の最悪の負の遺産は、化学兵器だとしている。第1次世界大戦では、両陣営とも塩素ガスやマスタードガスといった毒ガスを使い、多くの死傷者を出した。その反省から、終戦後の1925年のジュネーブ議定書で毒ガスの使用は禁止され、現在の化学兵器禁止条約(CWC)に受け継がれている。

『第1次世界大戦の遺産』という著書があるポール・シュルテ・バーミンガム大学教授は、第1次世界大戦で毒ガス攻撃にさらされた兵士は100万人単位だとし、それによって直接死亡した者は比較的少なかったものの、約9万人が皮膚の小さな焼けただれや肺への悪影響により、「ゆっくりと進行する死」に恐怖することになったとしている。毒ガスによって失明などの深刻な身体障害を負った兵士は多い。後に第2次世界大戦を引き起こしたアドルフ・ヒトラーも、第1次世界大戦で英軍の毒ガス攻撃を受け、一時的に失明したことがある。シュルテ教授は、その恨みによる「精神病理学的影響」が、後のヒトラーの行動に結びついた可能性にも言及している。

 100年後の今は生物化学兵器の使用が禁じられてはいるが、シリアでの使用が指摘されたり、北朝鮮などによる製造が疑われている現状では、根絶への道のりは遠いと言わざるを得ない。シュルテ教授は、「化学兵器の毒性は「(戦場で大規模な毒ガス使用があった)1915年時点と変わらず高いまままだ」と、CNNが取り上げたコラムを結んでいる。

Text by 内村 浩介