米中貿易戦争が北朝鮮問題にも飛び火か ポンペオ氏訪朝中止をめぐる背景

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 ポンペオ米国務長官が今週予定していた訪朝が、トランプ大統領の指示で急遽中止された。その理由は、非核化に向けた動きが十分でないためとされているが、エスカレートする米中貿易戦争の影響も指摘されている。

◆進捗の遅さに募る苛立ち
 トランプ大統領は24日、「私はマイク・ポンペオに今回は北朝鮮に行かないよう命じた。なぜなら、朝鮮半島の非核化に大きな進展が見られないからだ」とツイートした。同日、トランプ大統領はポンペオ氏本人と面会しており、訪朝中止はその直後に決定したようだ(ウォール・ストリート・ジャーナル紙=WSJ)。

 ポンペオ国務長官の訪朝は、今回で4度目になるはずだった。6月の米朝首脳会談で、北朝鮮の金正恩委員長は、朝鮮半島の非核化に協力すると表明したものの、具体的なアクションはいまだ起こしていない。米情報機関や国際原子力機関の分析では、北朝鮮は今も核開発を続けているとされる。WSJによれば、トランプ大統領は最近の政府担当者とのミーティングでも、「進捗状況に満足していない」と述べたという。

 今回のポンペオ氏訪朝の目的は、交渉の実務を担う北朝鮮担当特別代表に新たに任命されたステファン・ビアガン氏を北朝鮮側に紹介することと、非核化に向けて具体的な動きを示すようプレッシャーをかけることだった(WSJ)。北朝鮮問題に詳しいアメリカ海軍大学校のテレンス・ローフリッグ教授は、今回の訪朝中止はより強い圧力をかけるための政治的な策略の可能性もあるが、真相は分からないと困惑ぎみに語る(ザ・ヒル)。

Text by 内村 浩介