中国は豊かになっても民主化せず 読み間違えた西側、迫られる方針転換
◆西側の誤算。中国は独自の道を行く
経済面では1986年にはわずか80億ドル(約8400億円)だった米中間の物品貿易は2016年には5780億ドル(約60兆円)にまで拡大しており(FA)、グローバル経済に統合されることで、中国は急速に豊かになった。ここまではアメリカの戦略通りだったが、習主席による事実上の独裁となり民主化が遠のいたことで、各誌はこれまでの西側、特にアメリカの読みが甘かったと結論し、いくつかの誤算を指摘している。
最初の誤算は、中国が市場経済に移行しなかったことだ。それとは逆に、国家の力を利用し、自国の企業を優遇し、外国企業に厳しい条件を付けているとエコノミスト誌は述べる。市場規模が大きいため、外国企業は文句も言えない。中国政府の意向に逆らう場合は厳しい罰も待っており、威嚇による「シャープパワー」の前には多くの企業や国々が無力だと指摘している。
次の誤算は、経済の開放が政治的自由につながらなかったことだ。豊かになれば国民はさらなる権利や改革を求めると西側は考えており、開かれた社会は国の安定と党のサバイバルには脅威だった。特にネットや携帯電話によるテクノロジーの普及が党のコントロールを弱めるかと思われたが、中国政府は、テクノロジーを逆に利用し、検閲システムや監視ネットワークを構築し、国民を監視する能力を強化したとAPは述べている。
戦後アメリカが作った国際秩序に中国が仲間入りすると思ったことも誤算だったとFAは述べる。中国はある程度ルールに基づく行動をとるものの、自国の権威主義への干渉となる場合には従わない。南シナ海の領土問題で、国際司法裁判所の判決を無視したのはその一例で、むしろ国際法に従わないことが可能ということを中国に分からせてしまったと同誌は指摘している。
また、経済力に物を言わせる「シャープパワー」が、軍事力の「ハードパワー」を補完する形になっているとエコノミスト誌は指摘し、中国は地域の超大国としてふるまい、アメリカを東アジアから追い出すつもりだと述べている。中国は自国の独裁的体制を、いまや自由民主主義のライバルと捉えている同誌は述べ、一帯一路構想など自らの新しい国際機関を設立し、西側ルールと中国独自ルールの平行システムを描いていると説明している。