分析:中国の南シナ海の野望に打撃 ASEAN外相会議

Rouelle Umali / Pool Photo via AP

【フィリピン、マニラ・AP通信】 中国は、フィリピンで友好的なリーダーが台頭したことによって、南シナ海問題をめぐるフィリピンからの非難の声を免れた。昨年、仲裁裁判所が係争水域において中国の領有権主張を無効とする判決を出したにもかかわらず、フィリピンのこの変化を受けて中国は勢いを得た。

 フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領と中国の習近平国家主席の間の関係回復により、昨年のスカボロー礁におけるアジア近隣諸国間の緊張をはらんだこう着状態を和らげた。10月、中国はフィリピンがスカボロー礁で漁業をおこなうことを認め、長年の悪化していた関係に修復の兆しが見えてきた。

 米国のドナルド・トランプ大統領が、中国が係争水域に独断的に占領していることに抗議していたバラク・オバマ元大統領を引き継いだとき、米国の同盟国はトランプ大統領がアジアの大国に対するアメリカの地域的な対抗勢力としての役割を押してくるかどうか疑問に思っていた。

 例年のアジア太平洋諸国の外相会議は、フィリピンが議長国を務め週末(編注:8月5日~6日)に開催されたが、中国政府に対して現実をつきつける形になった。

 米国のレックス・ティラーソン国務長官はマニラでのASEAN(東南アジア諸国連合)会議の際にオーストラリアと日本のカウンターパートとも話し合いの場を持った。その会合の後、共同声明が出されたが、その中で、もちろん外交上の通例として直接中国政府の名前は出さなかったが、係争水域における攻撃的な活動を厳しく非難した。

 言うまでもなく、中国は素早く苛立ちを表明したのだが。

 中国の外交団のトップは、中国やASEAN地域の10カ国が「一同に南シナ海の状況は変化の兆しがあり、事態は前向きな方向に向かっていると認識している」一方で、「域外にあるいくつかの国」が前向きな変化が見えておらず、「過去の」考え方にしがみついていると発言した。

 今年のASEANの議長国であるフィリピンがこの地域で3回開催される主要サミットのうち1回目を4月に開催した後、ドゥテルテ大統領は恒例の議長声明を発表し、この中で中国政府が係争中の礁に人工島を建設していることなど議論を引き起こす点は触れられなかった。中国はこのような注目を浴びる公式声明から上記の点が抹消されるように圧力をかけていた。中国にとっては、これは外交上のクーデターとも見られることであった。

 しかしながら、マニラで8月5日~6日の週末に開かれた例年の会合の密談の場で、ASEANの外相達が共同声明を作成する際に、中国とその他5カ国政府も関連する領土問題について表現するための語調や言葉使いについて論争になった。共同声明は、議長声明とは異なり、協議のうえ作成される文章である。

 AP通信の入手した最終段階で公のものとなる前段階のASEAN外相宣言の草書は、ベトナムが強い調子で中国が係争水域で独断的な活動を増やしている事に言及するなど、密談中の様子を垣間見れる。

 例えばベトナムの外交団は、係争水域での「建設の拡大」への懸念について触れることを主張した。カンボジアは中国の同盟国であるが、軍事化の懸念を含めることへの投票を保留した。

 フィリピンは土地の埋め立てや軍事化について声明の中で述べることに反対している国の一つであった。アラン・ピーター・カエタノ外相は火曜日の記者会見でそのように認め、中国はもし宣言の中で仲裁裁定について触れられた場合は、南シナ海問題を解決するための今後の対話を中止すると脅かした、と言う。

 カエタノ氏は、「私達は前進出来ない。中国は、私達が仲裁裁定書について話したら今後の対話はないとすでに言っているのだ」

 つまらない話し合いが長引き、宣言が発表されるまでに遅れが出たと、南東アジアの外交官2名はAP通信に話した。一日後に大臣による共同宣言が発表された際には、驚くべきことに、土地の埋め立てや軍事化について触れられており、中国政府がうろたえたであろうことに、「外交や法的プロセスを尊重する」という風に、明確ではないが仲裁裁定についても述べられていたのだ。

 中国の王毅(ワン・イー)外相は、批判の絶えなかった南シナ海における中国の島しょ建設など、土地の埋め立てを含んだ問題について、あまり言及しなかった。

 次の論点は、提案された「行動規範」に関してであった。この行動規範は新規の建設や軍隊の要塞化を含む係争水域での攻撃的なふるまいを困難にする目的がある。中国はASEANとの対話を終え、小さな一歩に過ぎないが、両サイドがマイルストーンと認める、不可侵の取り決めについて交渉する枠組みであるという結論を出した。

 フィリピンを含むほとんどのASEAN国は、法的拘束力がある取り決めを後押ししている。中国は別な方法を好み、紛争解決は当該国同士の交渉を前提として、仲裁や紛争解決の取り決め等、議論を引き起こす問題について触れることに反対する。ASEANが意見の一致を得るためには、中国の要望を承諾するしかないのだ。法の原則の提案者は幻滅してしまっただろう。

 ワシントンD.C.に本部を置く米戦略国際問題研究所(CSIS)の、アジア上級研究員であるボニー・グレイザー氏は、合意した枠組みは「最小公倍数の結果である。中国が枠組みに法的拘束力を持たせることに反対し、紛争解決のメカニズムを含むことも拒んだため、厳しさに欠けている」という。

 グレイザー氏は、「ASEAN自体が分断され、中国が個々のASEAN所属国に対する影響力を強めている」「これは驚くことではないが、残念な進展である」という。

 王外相はマニラ会合にて、中国は国家主席が11月にフィリピンを訪問し、ASEANの首相会議に参加する際には、海上での取り決めについて交渉を開始する準備ができていると発表した。

 しかしその前に、まず彼は米国に向けて、状況は安定しているべきであり「域外からの主な妨害」がないことと発言した。

 米国、オーストラリアと日本はすぐに介入し、中国とASEANに対して「行動規範が時期を逃さずまとまり、法的拘束力を持ち、有意義且つ効果的であり、国際法とも一致したものであることを保証すること」を強調した。

 グレイザー氏は、「米国のような域外の国は、その地域の平和や安定を促進するために必要とされることを考える」「もし中国がそれに反対するのであれば、すればいい」と発言する。

By JIM GOMEZ, Associated Press writer Teresa Cerojano contributed to this report.
Translated by Conyac

Text by AP

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