ヒラリー氏は副大統領候補を女性にすべき? トランプ氏との本戦とサンダース氏の爪あと

 米大統領選で、民主党の指名獲得はほぼ確実視されているヒラリー・クリントン氏の陣営が、副大統領候補選びに着手したと米メディアが報じている。若手、ベテラン、非白人など様々な名前が上がっているが、女性を起用するのではという見方が広がっている。

◆欲しいのはまず勝利に貢献できる人物
 ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、クリントン陣営が副大統領候補リストを作成し、15~20人の名前が上がっていると報じている。クリントン氏は選定に関し、イデオロギーやその人物の融和性よりも、副大統領候補討論会で優位に立つことができ、クリントン氏こそが最良の選択だと有権者を納得させることができる人物を求めているという。

 クリントン陣営は、吟味を重ね戦略的に候補を選ぶだろうが、今年の選挙戦ではいまだかつてない多くの変数があり、選定が思い通りにはいかないこともあるだろうと同紙は指摘する。具体的には、クリントン氏が指名を獲得すれば女性初となること、共和党が騒乱状態であること、そして有権者の間に政治に対する怒りと不安という逆流が広がっていることだとしている。

◆女性ペア誕生か?
 メディアが大きく注目するのは、女性副大統領候補の可能性だ。アトランティック誌は、初の女性大統領誕生よりもさらに歴史的なのは、女性二人による大統領副大統領ペアだと述べ、女性を選べば、クリントン氏に有利に働くと述べる。

 同誌は、2008年の大統領選では、クリントン氏は黒人のオバマ氏相手に「歴史的立候補」という議論にうまく切り込めず、女性であることを十分に生かせなかった、と指摘する。しかし、今回はそれを前面に出すことができる。世論調査でもすでにアメリカ人の8割は女性大統領の誕生を受け入れるとしており、流れとしては申し分ない。

 ところが、クリントン氏には不人気な部分もあり、有権者は必ずしも女性だからといってクリントン氏を支持するとは限らない。そこで、もう一人の女性を絡ませれば、歴史的な出来事のために投票したいという衝動を有権者に与えることができるかもしれない、と同誌は述べる。特に、女性蔑視発言などで女性有権者からの人気が低いドナルド・トランプ氏が対抗馬となれば、より効果的だという。

 NYTは、相応しい候補としてマサチューセッツ州選出のエリザベス・ウォーレン上院議員を上げている。ウォーレン氏は民主党のプログレッシブ層に高い人気を誇り、今年の大統領選にも出馬が期待されたが、一貫して出馬の意思を否定した。CNBCのプロデューサー、ジェイク・ノバック氏によれば、ウォーレン氏とバーニー・サンダース氏の支持者は重なるため、クリントン陣営はウォーレン氏がサンダース氏支持に回ることを恐れていたようだ。今のところ、ウォーレン氏はどちらの陣営の支持も表明していない。

◆サンダースの影響も軽視できない
 ノバック氏は、民主党の未来はすでにクリントン氏を通り過ぎたようで、バーニー・サンダース氏と彼の進歩的なリベラル派支持者が、党の今と未来を支配していると主張する。また彼らが怒っているのは、クリントン氏がウォール街寄りであることだけではなく、党のエリートやクリントン陣営が持つ、秘密主義的な性質や仲間へのえこひいきだと指摘する。

 ノバック氏は、クリントン氏は、サンダース氏を副大統領に選ぶこともできるが、すでに両者には個人的敵意があるようなのでそれは不可能だと説明し、いっそのことクリントン氏は、少しばかりの権力を手放すという妥協の姿勢をアピールし、オープンに代議員に副大統領候補を選ばせるべきだと述べる。そうなればウォーレン氏が選ばれるとノバック氏は見ており、クリントン氏は、自分を嫌うサンダース支持者を引き付けることが出来るうえ、当選後も、ウォーレン氏の同僚や支持者の強力なサポートが得られるという利点があるとしている。

 NYTによれば、副大統領候補は、共和党の指名の見極めが終わった後に決定されるということだ。クリントン氏は夫ビル・クリントン氏の副大統領候補選びにも関わっており、だれよりも副大統領がどう機能するかを知っていると関係者は語っているだけに、その選択眼に期待したい。

Text by 山川 真智子