朴大統領訪米、米メディアの評価は? 親中姿勢からライダイハン問題まで報道

朴槿恵大統領

 韓国の朴大統領が訪米し、まずまずの成果を収めたようだ。このところ親中に大きくかじを切ったかに見えた朴大統領だが、オバマ大統領との会談では、米韓同盟の重要性を再確認。また、拒んできた安倍首相との会談にも前向きな姿勢を示した。日韓関係改善の鍵は、依然として慰安婦問題の解決だと述べる朴大統領だが、ベトナム戦争での韓国軍兵士の地元女性たちへの蛮行に対して謝罪を求める団体がアメリカで抗議活動を活発化させており、大統領の対応が注目される。

◆中国急接近疑惑は払しょく
 ワシントン・ポスト紙(WP)が、中国との絆を深めようとする韓国側の幅広い努力は首脳会談での話題になると思われる、と会談前に指摘するなど、多くのメディアが、朴大統領が中国の抗日戦勝70周年記念軍事パレードを観閲し、中露のリーダーと肩を並べたこと、また米国の意向に反しアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加を決めたことなどが、どのように会談に影響するのかに注目していた。

 しかし、ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)によれば、オバマ大統領は会談後、朴大統領との間に意見の不一致はほとんどないとし、両国の同盟関係には「亀裂はなく」、かつてないほど強力だとコメントした。中国が国際ルールを無視したときは、「声を上げる」べきと釘は刺したが、米韓関係は良好だとの認識だ。朴大統領は、中露のリーダーと会ったのは、北朝鮮の核の脅威に対抗するための協力を取り付けるためだったと説明。また、「オバマ大統領は米韓関係と中韓関係が両立可能だと断言した」と話し、安堵したようだったとNYTは述べている。

 フォーブス誌に寄稿した、韓国研究の専門家、スコット・シュナイダー氏も、中国との絆を深めようとするのは、韓国にとっては北朝鮮対策であると指摘。朝鮮半島を安定化させ、日本と中国に挟まれた韓国の微妙な立場を維持するためには、米国の強い支援が欠かせないと説明し、朴大統領も米韓同盟の大切さは理解していると述べている。

◆日韓会談にも意欲
 ブルームバーグは、訪米中の朴大統領が、11月に予定されている日中韓首脳会談の時期に、安倍首相との首脳会談に応じる姿勢を見せたと報じ、朴大統領が地域の安全保障の問題と領土・歴史問題を分けるという新しい意欲のシグナルを出したと述べている。

 もっとも、両国関係の改善には、慰安婦問題の進展が必要という以前からの主張を朴大統領は変えていない。ワシントンで開かれた講演で、現在生存している元慰安婦は47人だけと述べ、「この問題の解決のため、また彼女らのうっ積した怒りを終わらせるには、時間がない」と話している(ブルームバーグ)。

◆もう一つの「戦時の性暴力」問題
 一方アメリカでは、ベトナム戦争中、韓国人兵士に強姦された数千人の女性たちに対し、朴大統領の公式な謝罪を求める団体「ボイス・オブ・ベトナム」の活動が報じられている。米フォックス・ニュースのサイトに意見を寄せた共和党の元上院議員、ノーム・コールマン氏は、「ベトナム戦争における、語られなかった大きな悲劇の一つ」とし、この活動を支援。朴大統領の父である、朴正煕元大統領が率いた韓国兵たちは、ベトナム人女性を強姦しただけでなく、妊娠させ、その結果生まれた5,000人から3万人の「ライダイハン」と呼ばれる混血の人々が、ベトナム社会の片隅で生きていると述べる。

 同氏は、率直な謝罪をしないことは、韓国人「慰安婦」への性的暴力に対し日本に謝罪を要求する朴大統領の道徳的権威を傷つけるだけだと主張。被害にあったベトナム人女性たちで生存しているのはわずか800人だとし、数十年の間、犠牲者として、また「ライダイハン」の母として逆境に耐えて生きて来た女性たちの苦しみを認め、謝罪するべきだと訴えている。

Text by 山川 真智子