ドイツ:日本より低い出生率、労働人口減少に危機感 移民受け入れも先行き不透明か

 ドイツの出生率が世界最低になり、将来の労働人口の減少に繋がるとして、経済への影響が懸念されている。欧米、アジア各国では、人口減少の影響が問題視されているが、爆発的に人口が増えるアフリカでは「人口ボーナス」による発展が期待されている。

◆人口増は、移民受け入れ国ドイツでも困難
 ドイツの監査法人BDOとハンブルグ国際経済研究所(HWWI)が行なった調査によると、ドイツの住民1000人当たりの赤ちゃんの出生数は、過去5年間で平均8.2人となり、日本の8.4人を下回った、とBBCは報じた。

 ドイツでは、2030年までに20歳から65歳までの労働人口の割合が61%から54%に低下すると見られており、結果として賃金が上昇し、「長期的に見て、経済における優位性を維持できない」と、BDOの理事の1人、アルノ・プロブスト氏は指摘する。同氏は、若い移民受け入れとより多くの女性労働力の活用を提唱。しかしBBCは、国内で移民受け入れ反対を掲げる政党が支持を拡大していることや、政府による子育て支援にもかかわらず出生率が上がらないことを挙げ、解決が難しいことを示唆した。

◆人口減は受け止めるもの
 英エコノミスト誌は、都市の人口減少について報じ、多くの国において、多様な経済組織を持つ大都市の人口は増加するが、小さな都市の人口は減っていると指摘する。

 人口の減少は、アメリカ中西部、東欧、イギリス北部のような鉄鋼、繊維などの斜陽産業が集中する都市部で深刻化した。しかし現在は、アジアでも多く見られる現象で、急速に都市化する中国やインドでさえも、一部の都市ではすでに人口が減少中だという(エコノミスト誌)。

 都市の人口減少は、二つのプロセスが原因だとされる。一つ目は、人口の移動だ。ほとんどの場合は、産業の衰退が大きく影響しているが、労働者が遠くまで移動することはないと言う。財政破綻したアメリカのデトロイトの場合、ドーナツ化したものの、郊外を含めた都市圏としての人口はここ数十年ほぼ変わらない。ソウルの場合も、空港とともに急速に発展する近隣のインチョンに、住民を奪われた形だ(エコノミスト誌)。

 二つ目の原因は、人口統計上の変化だ。広く都市化した国では、移民の受け入れや、出生率の上昇がない限り、死亡数をカバーできず、都市人口は減少する。エコノミスト誌は、日本のようにどちらの対策も取れなかった国においては、人口が増加する都市は、他の都市の住民を引き抜いているにすぎず、国全体で「人口統計上のイス取りゲーム」をしているだけだと説明する。

 一般的に人口減への対応策はそれを反転させることと思われており、日本政府は地方に新たな職を作り、若者の東京への流入を減らそうとしている、とエコノミスト誌は述べる。しかし、世界の都市では、使われない建物を取り壊して草地や公園に変え、人口減の現実を受け入れる市も出ていると同誌は指摘。成果を出せず過去にしがみ付くほうが、大きな失敗かもしれないと述べている。

◆アフリカの未来は人口にあり?
 さて、エコノミスト誌によれば、都市人口の減少が唯一みられないのが、サハラ砂漠以南のアフリカだと言う。

 この地域は特に人口が急増中。アフリカ開発銀行は、アフリカの人口は2050年には現在の約10億人から2倍となり、2030年までには、サハラ砂漠以南だけで、年間2460万人の新たな労働人口が生まれるとしている(インターナショナル・ビジネス・タイムズ)。

 国連人口基金は、この「人口ボーナス」が、サハラ砂漠以南のアフリカに、アジアで起きたような経済発展をもたらす鍵だと期待しているが、『Capital Economics Africa』 のアナリスト、ジョン・アシュボルン氏は、人口ボーナスだけでは発展はないと指摘。政策や産業構造が重要で、生産性の低い農業や鉱業から、新しい労働力の波を吸収できる、大型で労働集約的な製造業等への転換が必要だと述べた。

Text by NewSphere 編集部