“南京虐殺”否定に遺族らが抗議 初の国家式典控え、日本の右派を牽制か

 12月13日、南京市の「南京大虐殺記念館」で、 習近平主席らが出席する国家レベルの式典が行われる予定だ。これは、1937年12月13日に起きた南京事件について、同日を「国家哀悼日」に制定したことに合わせてのものだ。

 事件の生存者や犠牲者の家族らが国連に公開書簡を送るなどの動きもある。懸案となる日中関係を軸に、欧米・中国メディアが今後の動向に注目している。

◆習近平国家主席が南京虐殺事件記念式典に出席へ
 ロイターは、「南京虐殺事件」は、日中関係に深く食い込んだトゲとして長らくあり続けている、と報じる。

 習主席は今年3月にドイツで、日本が南京で「30万人以上を殺害した」と語った。日本はこれに対し、第三国での反日発言に抗議。菅長官は「南京での旧日本軍による殺傷や略奪を否定していない。しかし、人数についてはさまざまな意見がある」と指摘した。

また同メディアは、安倍首相がA級戦犯を祀る靖国神社に参拝し、日中関係の悪化を招いたことを指摘している。

◆国連事務総長に送られた被害者らからの手紙
 また12月10日には、世界人権デーに合わせて、南京事件の生存者や被害者の家族など、合わせて3361人が、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長らに公開書簡を送った。

 チャイナ・デイリーによれば、手紙は11月28日に送られたが、世界人権デーの日に公表することで、世界の注目を引き付け、日本政府が中国の人々へなした害について内省を促すねらいがあるとのことだ。

 手紙の内容は下記の通りだ。

・日中両国が歴史的な事実を尊重した時に初めて、本当の和解がなし得る
・虐殺事件は、人間の良心、権利、文明への甚大な侵害である
・虐殺事件を否定したり、靖国神社への参拝を行ったりする日本の右派勢力によって、再び虐殺の生き残りや被害者の家族が心を痛めている
・そのような行為が、日本人、特に若い世代の歴史観を誤った方向に向け、日中間の友好や平和を阻害している

 また中国国営放送CCTVは、手紙で虐殺の関係者らが、歴史を思い出す目的は憎しみを持続させるためではなく、歴史を尊重した上での真の和解に達することだ、と述べていることを伝えている。

◆日中関係改善の兆し 
 経済的な利害を考えれば、日中関係を悪化したまま放置しておくわけにはいかない。ロイターは、日本に過去を思い出させつつ、関係緩和を頓挫させないように、慎重に足を進めなければならない、習氏の難しい状況を指摘している。

 関係改善の兆しも見え始めている。高原明生・東京大学大学院法学政治学研究科教授のニューヨーク・タイムズ紙への寄稿では、APECでの25分の日中首脳会談がターニングポイントだったとしている。
 
 高原氏は、中国の指導者層は、熱狂的な愛国主義を政治の瑕疵の埋め合わせとして利用してきたし、日本がそのターゲットとなってきたと指摘する。そのため、日本との関係改善には、リーダーの強固な権力基盤を必要としているが、習主席にはまだ十分な力がないと指摘している。とはいえ習主席は安倍首相と(無愛想な表情だが)握手し、関係改善の道を開いた、といえそうだ。

 ロイターも、日本人外交官の言葉を引用して、APECでの会見後に関係改善への動きが見られるとしている。冷えきったかのように見える日中関係だが、今後の進展が注目される。

Text by NewSphere 編集部