海自、米印合同演習に5年ぶりゲスト参加 対中戦略で日印の利害が一致と海外報道

 日米印3カ国による海上合同軍事演習「マラバール18」が24日、四国南方から沖縄東方海域で始まった。「マラバール」は、毎年インドとアメリカが行っている原則2カ国による演習だが、今年は5年ぶりに日本がゲスト参加した。

 一方、ハワイ沖ではアメリカ主導の世界最大の海上合同軍事演習「RIMPAC 2014」が8月1日まで開催中だ。こちらには、中国が24回目にして初めて参加している。「マラバール」との同時期開催は、期せずして中国を巡る複雑なアジア太平洋地域の軍事情勢を反映した形となった。

【インドのしたたかな対中戦略を反映】
 「マラバール」は米印海軍の協力体制を強化するために1992年から行われている。海上自衛隊は、2007年と2009年にゲスト参加しているが、特に2007年にベンガル湾で行われた演習は、オーストラリアとシンガポールも加わった大規模なものとなった。当時、これに対して中国が強く抗議してきたため、しばらくは元の規模に縮小せざるを得なかったと、インド紙タイムズ・オブ・インディアは報じている。

 今回の日本の参加は「海洋進出を続ける中国に対抗するための、より大規模な協力体制を反映したものだ」とウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)は報じる。同紙のインタビューに答えた元インド海軍高官も、日米とインドが足並みを揃えることにより、「中国の動きに対する新たな戦略」を打ち出すことが狙いだと述べている。

 中東から自国への石油輸送のシーレーンを中国の影響から守るという点でも、日印の利害は一致している。これに関連して、インドは、中国がパキスタンとスリランカに港を建設し、インド包囲網を敷いていることにも神経を尖らせている。しかし、一方でインドは経済面では中国との関係を日本と同じくらい重視しているとWSJは記す。タイムズ・オブ・インディアは「インドは日本、アメリカ、東南アジア諸国と中国の間で繰り広げられるパワープレイに引きずり込まれることは望んでいない」とも述べている。

【RIMPACでは日中が微妙な距離感で並び立つ】
 一方、ハワイ沖では尖閣で火花を散らす日中の艦艇が並び立って演習に参加する姿が目を引いている。ただし、海上自衛隊と中国海軍の公式な接触は6月末の開会以来見られていないという。ブルームバーグがこの微妙な距離感に着目した記事を配信している。

 中国は参加国中2番目に多い4隻を派遣、日本はイージス艦「きりしま」とヘリコプター搭載型護衛艦「いせ」を派遣している。記事によれば、日本の指揮官、中畑康樹海将補は、「より良い国際的な安全保障環境を築くことにつながる」「同じ方向を向いていることは、我々全員にとって良いことだ」などと中国の参加を歓迎したという。

 しかし、日中の正式な会合や直接的な合同訓練は予定されていない。中畑海将補もブルームバーグに対し、中国艦の指揮官と口頭であいさつを交わした程度で、日中高官の“ニアミス”があるとしても8月1日の閉会式の場だろう、と述べている。

【中国の巡視艇がRIMPACを“スパイ”か】
 一方、そのRIMPACが行われている海域では、中国の「スパイ船」の存在が議論を呼んでいる。ワシントン・ポストによれば、アメリカ当局が先日、演習参加艦とは別の中国の巡視艇が、演習海域の外周をうろついていることを明らかにした。同紙はこれを「他の参加国の艦艇や装備をスパイしている」と表現している。

 アメリカ太平洋艦隊は、「我々はこの船(中国の巡視艇)に対し、アメリカ領海の外にとどまり、RIMPACの邪魔をするような行動を慎むよう求める」と声明を発表。対する中国国防省は、「中国は国際法のもと、全ての沿岸諸国の権利を尊重する。そして、関係諸国もまた、法を守って活動している中国船の権利を尊重することを望む」と反論した。

 アメリカ太平洋艦隊によれば、RIMPAC開催中のハワイ近海に中国の巡視艇が現れたのは、これが初めてだという(ワシントン・ポスト)。

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Text by NewSphere 編集部