親日台湾、なぜ日本に激怒? 故宮展ポスター表記ミスに中国配慮疑惑…謝罪で一段落

 東京国立博物館は23日、台湾の国立故宮博物院の収蔵品の展示についてのポスターに「国立」の文字が抜けていたことを台湾側に謝罪した。

 イベント宣伝のポスターの表記が間違っていることに気づいた台北の国立故宮博物院が19日、東京国立博物館にJRの構内などに貼られたポスターを全て撤去するよう求めていた。

 東京側がポスターを撤去、謝罪後、24日に予定通り台湾関係者出席のもとオープニングセレモニーが行われた。

 展示は東京の後、九州国立博物館に移動し10月まで予定されている。同博物館所蔵品の貸出・展示はアジア地域では日本が初めてとなる。なお、話題の「翠玉白菜」は、24日から2週間、東京だけの展示となるようだ。

【台湾政府は怒りを表明】
 台湾はこの問題に関して神経質だ、とAPは報じている。

 香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙によると、表記間違いに台湾側は激怒し、馬英九総統はイベントの中止を要請。代表団の名誉団長として来日する予定だった周美青夫人は、23日のセレモニーへの出席をキャンセルした。

 台湾の英字紙タイペイ・タイムズ紙は、誤りがあったとの報告を受け、展示の目玉でもあった「翠玉白菜」が江宜樺行政院長の許可が下りるまで、開梱されずにいたことを報じている。

【東京側は謝罪するも理由を明らかにせず】
 東京国立博物館の銭谷真美館長は23日、博物館は間違いに気づき、すぐに訂正したと謝罪した。

 これに対し国立故宮博物院の馮明珠院長は、台湾人の代表として謝罪を受け入れたと応えた。また謝ってくれたことで、信頼と友好が再び両国を結びつけることになると信じている、と述べた(タイペイ・タイムズ紙)。「日本と台湾の人々の間の感情を前向きなものに修復するには十分だろう」「最も重要なのは信頼、誠意、そしてお互いに相手に対して敬意を持つことだ」(AP)

 東京側は、なぜ間違いが起きたのか、理由を明らかにしていない。銭谷氏は、「この問題をとても深刻なものだと認識しており、直ちに修正した」「問題を起こしたことを謝罪したい」(AP)と述べた。

【中国は日本の間違いを正当化】
 台湾政府の反応は余りにも鈍かった、と地元タイペイ・タイムズ紙は批判している。

 親中派として知られる馬氏の対応に国内の一部は不満のようだ。中国に配慮し対応が遅れたのではと懸念しているという。台湾・民進党の蔡其昌氏は、「馬氏は今後、台湾の主権に関わる同じような問題が生じた場合、断固とした決意ある態度を示すことが望ましい」しかし、「今回の日本への対応は、これからの指標となるのではないか。馬氏は、日本にだけ強硬で中国には柔軟な態度をとるなどということばかりではなくなるだろう」(タイペイ・タイムズ紙)と外交路線の変化を期待している。

 サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は、日本側が「国立」の表記をしなかったことについて、「ひとつの中国」というこれまでの一般的な認識を踏襲したため、台湾を独立した国家としの表現をしなかったのだろう、と報じている。また、台湾の故宮博物院は、650,000の所蔵品を有するが、元々は中国の故宮博物院の所蔵品で、1949年の国共内戦終結の際に持ち出されたものだ、と説明している。

 台湾を独立国家として正式な外交を結んでいるのは23ヶ国に過ぎない。そのほとんどは、南米、アフリカ、南洋の国々だ。

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Text by NewSphere 編集部