これで尖閣に集中できる? 国境紛争抱える中国・インドが新協定

 訪中中のマンモハン・シン印首相と李克強・中国首相は23日、「中国・インド戦略協力パートナーシップの将来発展像」と題して、防衛協力協定の調印を発表した。

 また、2015年までに700億ドルから1000億ドルへと二国間貿易を増やすことや、中国からインドへの投資誘致のための工業団地建設、河川水や道路建造物の共有など、経済面での協力強化も合意されている。

【敵兵が見えなければ戦闘にはならない】
 この協定は、国境地帯において両軍は相手側の巡回部隊を追尾してはならず、「最大の自制」「礼儀をもって接する」「実力行使をしない」などと定めている。

 また、現場責任者から省庁レベルまで、5つのレベルで防衛コミュニケーションを推進することも合意された。両軍首脳間のホットライン設置や、2013年11月に対テロ演習を実施するなど、合同での戦術演習や軍事訓練も示唆されている。

 李克強首相は「私はこれが、国境地域の平和、静謐、安定性の維持を助けると確信しております」、シン首相も「国境の平和と静謐は印中関係成長の基盤でなければなりません」と語った。

【口先だけと疑うインド人】
 背景には、両国間の長引く国境紛争がある。1962年には戦争にも突入している(中国が勝利、アクサイ・チン地域14600平方マイルを得る)。今年に至っても、国境周辺での軍拡競争や、中国軍がインド領内にキャンプを張ったとされる問題、スポーツ選手へのビザ発給問題など、緊張は解消していない。インドは、宿敵パキスタンと中国との経済協力についても問題視している。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、インドの専門家らは協定の実効性について懐疑的だ。すなわち、協定内容のほとんどは以前の約束の繰り返しであるか、単なる意志表明であって、厳密な意味で前進と言えるものではないという。

【中国側の見解】
 また、インド紙ザ・ヒンドゥーは、周剛・元中国駐印大使へのインタビューで、尖閣諸島をめぐる日本との紛争を含め、中国が多数の国と国境紛争を抱えていることについて質問した。同氏は、尖閣については「1970年代の旧世代の指導者間での合意に違反した」日本に全責任があり、他の紛争とはまるで異なる、と答えた。ベトナムなどASEAN諸国との南沙諸島紛争については、「友好関係を維持したい」と答えている。

 またインド・日本・ドイツ・ブラジルなどが国連安保理常任理事国入りを目指していることについては、インドにのみ賛意を示しているようだ。

【日本の見解】
 インドとの国境問題の再燃を防ぐことで、中国はより尖閣や南シナ海へ集中対処できるようになったとも言える。日本各紙は、中国が尖閣問題への意識が背景にあると報じている。

Text by NewSphere 編集部