台湾の軍事演習は、中国へのけん制なのか?

 台湾は17日、2008年以来の大規模な実弾演習である「漢光演習」を、一部のメディアに公開した。
 この軍事演習は、中国による澎湖諸島への侵攻を想定したものだ。台湾の馬英九総統は、就任後初めて、軍の最高司令官として、参謀総長とともに視察した。
 馬総統は「ここ数年間、中国は経済発展に伴って大幅に質と量の軍備増強を行っている」と述べ、続けて「脅威は事実であり、両岸における平和維持のためなら、それなりの準備をしなければならない」と述べ、中国をけん制する構えを見せた。
 台湾の行政院大陸委員会も、「両岸関係は、積極的な提案、交渉および対話を通して、平和的発展を促進するために努力し続けるべきである」と述べている。

【馬総統の「漢光演習」視察のねらいは?】
 馬氏は、2008年に総統に就任して以来、一度も軍トップとして漢光演習を視察していなかった。同氏は、前陳総裁の親日・親米路線ではなく、親中よりの政策をとっていたため、中国への配慮ではないかと非難されていた経緯がある。
 BBCは、馬氏が総統に就任して以来、両岸関係(中国・台湾関係)は改善されている一方、中国と親密になりすぎているのではという批判にさらされていることを指摘した。そうした批判を回避するために、軍事演習を視察したのではないかと推測している。
 馬総統はこれまで親中路線を採ってきたが、支持率の低迷に直面している。世論を味方につけたい同氏は、これまでになく厳しい立場に立たされているという。

【台湾の安全保障に懸念の声】
 2015年、台湾の徴兵制度は廃止され、志願兵制度へ移行する予定だ。国防部は今年第一回の志願兵計画人数である約1200人を募集したが、申込者は622人だったという(なお、志願兵が必要数に満たない場合には、徴兵制が復活する)。「志願者を増やすために少なくとも給料を高くする必要がある」と、高華柱国防部長は述べた。

 台湾の人々は、国を守るためにもっと懸命に取り組まなくてはならないと語る専門家もいると、フィナンシャル・タイムズ紙は紹介している。
 一方同紙は、軍艦部が「今回の漢光演習で、多くの台湾人に軍の強さをアピールでき、入隊するよう奨励できる」と語っていることにもふれている。

 また香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は、国防に不安を抱く議員やマスコミなどの声に対応する形で、実弾演習が行われたという見方を紹介している。

Text by NewSphere 編集部