中国はアフリカの「宗主国」か、「パートナー」か?

中国はアフリカの「宗主国」か、「パートナー」か? 中国の習近平国家主席は、就任後初めての外遊で、最初の訪問先であるロシアを24日に後にし、タンザニアに到着した。今後30日までの日程で、南アフリカ、コンゴ共和国を歴訪の予定。特に、南アフリカではBRICS(新興5か国)の首脳会議に出席する。
 海外各紙は、アフリカへの援助の継続と相互利益関係を強く訴えた習氏の姿勢や、アフリカの市井の実態、さらには、中国紙による切り口をそれぞれ紹介した。

【中国批判を意識した発言も】
 ニューヨーク・タイムズ紙は、25日、タンザニアに到着した習国家主席が、中国政府が「容赦なく競争的な中国企業が、アフリカの産業・職業育成の努力を圧殺している」という批判に留意していくこと、そして、援助、奨学金、技術移転によってそうした懸念を払拭していくことを約束したと報じた。

 この発言の背景には、最近、ナイジェリアの中央銀行総裁であるラミド・サヌシ氏が、フィナンシャル・タイムズ紙への寄稿で鳴らした警鐘があるとみられる。これは、毛沢東時代から続く、中国はアフリカの「脱西側支配」の支援者であるという構図に疑念を投げかける内容だ。同氏は、今や世界第2位の大国に成長した中国が、アフリカの資源を「持ち去り」、大量生産した安価な「加工品」を売りさばくのは、アフリカ人の職、経済成長、産業発展をむしばむ、新たな「植民地支配」にほかならないと糾弾した。

 習氏は、3年間で約200億ドルのアフリカへの借款供与のほか、3万人の職業訓練計画や1万8000人の海外留学支援などを表明。中国が「大国」を目指すからといって、アフリカを踏み台にすることはなく、相互利益関係を目指すことを強調したという。

【中国・アフリカ関係の実態】
 一方フィナンシャル・タイムズ紙は、アフリカの小国レソトに注目。小売店を経営しているものの、中国人経営の競合店に追われて閑古鳥が鳴いているという一市民と、大繁盛で「数え切れない店舗を持つ」と語る中国人経営者の姿を対比し、アフリカ人が直面する現実的な困難を浮き彫りにした。
 ただし、市井では反発は少なく、「仕方がない」という思考が中心的であるほか、欧州各国が国内、及びEU内の問題で「内向き」になっている今、投資や援助を必要とするアフリカにとって中国の重要性がさらに増しているのは明らかだという。同紙は「(内向きになりすぎて)中国にアフリカを明け渡しているヨーロッパは過ちを犯している」というレソトのタバネ首相の談を載せ、アフリカのジレンマを浮き彫りにした。

【中国メディアはどう報じたか?】
 BBC(英)は、中国国内のメディアが、習氏のアフリカ外遊をどう報道したかに着目した。その内容は、総じて、前述したサヌシ氏の「植民地主義」「搾取」との見解を否定するものだ。同氏の主張を「馬鹿げている」と一蹴する雑誌がある一方、環球日報のように「(サヌシ氏の主張には)穴は多いが、中国―アフリカ関係の複雑化を示すものだ」と捉え、「資源供給の見返りとしての経済援助のみならず、アフリカ経済の自立的発展に与しなければならない」とする報道まで、幅があった模様だ。

 また、広州を拠点とする人気の経済紙「21世紀経済報道」は、今回の外遊の最重要点は、アフリカ市場を、中国、中東、ヨーロパ市場に開くタンザニアの港湾建築に対する中国の援助だと報じた。.この港湾プロジェクトについては、香港の日刊紙「明報」が、元人民解放軍の中国政府系シンクタンクの上級コンサルタントの、「中国が将来、より広く世界に進出するに伴って、中国海軍は、供給拠点を設置する必要がある」との発言のほか、中国の軍事ウォッチャーの、「中国はインド洋での軍事力拡大への懸念が鎮まってから、タンザニア港を利用するだろう」との談を報じている。

 中国のアフリカ諸国との貿易額は2012年には前年度比19.3%増の1980億ドルに達した。今後の関係強化、影響力拡大の行方が注目される。

Text by NewSphere 編集部