「真の日本を知るなら徒歩の旅」中山道・熊野古道など、外国人旅行者に人気じわり

Yamato Aoba

 交通機関が発達した現代にあって、あえて徒歩の旅を選ぶ外国人観光客が増えている。観光の枠を超え、その土地の文化と直に触れ合えることは掛け替えのない魅力だ。中山道や熊野古道などの一部を歩くツアーなど、ユニークな体験を求めた旅がトレンドになりつつある。

◆そこにしかない体験は「まるで俳句のよう」
 旅の参加者たちは、山村ならではの大自然の恵みに満足しているようだ。米紙レジスター・ガードの記事では、旅行ライターのジョセフ・リーバーマン氏が、中山道などを11日かけて巡った体験を綴っている。特に食事は期待を裏切ることはなく、宿が栽培したコメなどのほか、地元で獲れたイノシシや馬肉の刺身など、珍しい食材を堪能したという。また、囲炉裏で熱した鉄瓶や、その湯で振舞われる日本茶など、日々の小さな思い出がまるで俳句のように心に焼きつくと振り返っている。他にも馬籠宿の野趣あふれる吊り橋、妻籠宿のサムライ映画のような木造の街並み、雪に覆われたヒノキの街道、そして一日の疲れを癒す温泉など、見所は目白押しだ。

                                                                                                                 

 古道としては熊野古道も外せない。旅行ライターのアン・アベル氏は、9日間のトレッキングの感動をフォーブス誌に寄せている。高野山で苔むした墓に心を打たれたほか、紅葉を楽しんだそうだ。宿坊に宿をとったため、夕方5時半には食事、朝6時には起床という厳しいスケジュールだったという。しかし大変というよりも、心の底からリラックスできたというから不思議だ。さすがに薄い布団と正座だけはこたえたらしく、後に泊まったホテルのベッドに感謝したというエピソードも微笑ましい。

 こうした徒歩での旅は、スペインの巡礼路サンティアゴ・デ・コンポステーラに代表されるように、もともとヨーロッパで人気だった。香港紙サウスチャイナ・モーニングポストによると、近年ではエベレストの登山や日本の中山道など、欧米旅行者がアジアの徒歩旅を楽しむケースが増えているということだ。

◆心配は杞憂
 異国の山奥でのトレッキングとあり、参加者は多少の不安も感じたようだ。レジスター・ガード紙の記者は主に宿の設備面を懸念したという。しかし、一度旅が始まると予想以上に快適だったようだ。一部にトイレ・バス共同の民宿もあったが、ツアーに同行したニュージーランド、シンガポール、アメリカなどからの旅行者は皆、ありのままを楽しんでいたという。

 また、中山道の道はさほど急峻ではないため、安全面でも極端な警戒は無用だ。トラベル・デイリー・ニュース誌によると、熊野古道と中山道について、ある旅行社は5段階中で2番目の易しさだと評価している。安心して楽しめるという点も、多くの外国人を惹きつけているポイントのようだ。

◆東京だけが日本じゃない! 各地に眠る文化を堪能
 徒歩の旅は、ステレオタイプに惑わされない真の日本の姿を見せてくれる。フォーブス誌の記事では、日本についてアニメや電気街のイメージが強いと指摘する。また、伝統文化の面でも、桜や着物といった限られた代表例だけが注目されがちだ。記者は農村部の文化や儀式が非常に豊かであることに感銘を受け、徒歩で土地の魅力を訪ねる意義を強調する。

 隠れた日本の魅力に心酔するのは、有名人も同じだ。ニュージーランド・ヘラルド紙(10月16日)によると、イギリスの人気女優ジョアンナ・ラムレイ氏は北海道の山奥から沖縄の離島までを旅し、中山道なども訪ねている。「(日本は)まるで童話のようにその姿をあらわし始めた。ただただ目が眩むようで……信じられないくらいに美しく、礼儀正しくて、興奮に満ちていた」とローカルの魅力に心打たれている。記事では日本全土が東京のような都市だと思われがちだと指摘しているが、徒歩の旅はこうした誤解を新鮮な驚きに変えてくれるに違いない。

 中山道の馬籠宿から妻籠宿までは約8kmの距離で、3時間もあれば気軽に山中のハイキングを楽しむことができる。江戸時代の往来に想いを馳せ、名物に舌鼓を打つのも悪くなさそうだ。

Text by 青葉やまと

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