世界的インフレも、なぜ日本だけ物価上昇しないのか

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 英エコノミスト誌は、生産者物価の上昇が消費者物価に反映されない理由には、数十年間ほぼインフレが起こらなかったことで蓄積された根強い期待が影響しているとする。

 同誌は、日本企業は輸入品の価格上昇を消費者に転嫁しないことで有名だと述べる。最近キッコーマンが2月からの値上げを発表したことが全国ニュースになったが、アメリカならこんな出来事はほとんど注目されないだろうとしている。

◆低インフレの弊害 人は動かず賃金も伸びず
 海外のようなインフレ高進が日本で発生するリスクは非常に限定的だと日本銀行の黒田総裁は語ったが、問題はその結果として生じる生産や賃金の伸び悩みだとWSJは述べる。

 野村総合研究所の木内登英氏は、物価上昇は最も需要の強い場所や投資すべき場所を企業に知らせるためのシグナルであり、その結果、労働者はより生産性が高く、高い賃金を得られる成長中のセクターに流れ込むと説明する。日本ではこのメカニズムが機能していないという考えだ。

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Text by 山川 真智子