話題の音声SNSアプリ「クラブハウス」とは? 中国では利用禁止に

AP Photo / Mark Schiefelbein

 公開されてから1年にも満たない完全招待制の音声チャットアプリ「Clubhouse(クラブハウス)」には、テスラ社CEOイーロン・マスク氏やフェイスブック社CEOマーク・ザッカーバーグ氏など、IT界の大物から関心が寄せられている。中国政府は、言うまでもなく国内での使用をすでに禁じている。Clubhouseとは一体何か。

◆Clubhouseとは?
 iPhoneのみで利用可能なこのアプリでは、テクノロジーからプロスポーツにいたるまで、ほかにも子育てや黒人文学など、多岐にわたるテーマについて会話を始めたり聴いたりすることができる。メッセージや写真、動画を投稿する機能はなく、そこにあるのはユーザーのプロフィール写真と音声のみである。

 コミュニケーションは電話のように個人間で行うこともできるし、会議やステージ上でのインタビューのように、著名人のトークをほかの数千人のユーザーと一緒に聞くこともできる。ポッドキャストのようでもあり、電話会談のようでもある、そしてソーシャルメディアの要素もあると考えてほしい。無料で利用することができ、少なくとも現時点では広告は表示されない。

◆参加するにはどうすればいい?
 現時点で唯一の参加方法は、すでにClubhouseを利用している人からの招待を受けることである。いまはまだ、このアプリは「ベータ版」の段階だ。Gmailもサービス開始当初は招待制であり、アカウントを取得することでマニア心がくすぐられたものである。招待してくれる人がいない場合でも、参加できる日はそう遠くないかもしれない。Clubhouseは当初、新規ユーザー1名に対して2名の招待枠を設定していた。招待枠は現在5名に増え、ユーザー層を広げる準備が整いつつあることを示唆している。また、アプリをダウンロードし、Clubhouseへの参加待機リストに登録することもできる。

 会員制クラブのようなこの仕組みがアプリの人気の秘訣であり、一方でその規模は刻々と拡大している。ラッパーのドレイクや俳優のジャレッド・レト、女優のティファニー・ハディッシュ、さらにIT界で影響力のある投資家のマーク・アンドリーセン氏やツイッター社のジャック・ドーシーCEOなど、初期メンバーである著名人の影響力の高さも爆発的な拡散の要因となった。Clubhouseのユーザー数については公表されていないが、アプリ調査会社「App Annie(アップ アニー)」によると、ダウンロード数は530万回に上るという。

 招待を受けた後は、自分のプロフィールをツイッターから取り込むこともできるし、一から作成することもできる。そして、特定のユーザーや、多様なトピックから気になる「クラブ」をフォローする。実名での登録が推奨されているが、義務付けられているわけではないようだ。iPhoneも必要になるだろう。Clubhouseは、Android端末やWeb版でのサービスは現時点で行っていない。

◆Clubhouseの創業者は誰?
 Clubhouseは、シリコンバレーの起業家ポール・デイヴィソン氏とローハン・セス氏により創業された。デイヴィソン氏は、2016年にPinterestに売却した位置情報を利用したSNSアプリ「Highlight(ハイライト)」の創業者としてよく知られており、一方のセス氏はエンジニアとしてGoogleに務めていた経験をもつ。選ばれた少人数をClubhouseに招待し始める時期としては、想定外であったとはいえ、これ以上のタイミングはないだろう。このアプリが公開された2020年3月はまさに、新型ウイルス感染拡大を受け、家での自粛生活を強いられていた人々が、家族やルームメイト以外の人々と対話する機会を強く求めていた時期である。

◆なぜいまになって、注目が高まっているのか?
 一番の契機として考えられるのは、イーロン・マスク氏とマーク・ザッカーバーグ氏が予告なくClubhouseに登場した最近の出来事だろう。保有資産を合わせると2800億ドルにもなるIT業界を象徴するこの2人が、数日以内の間隔で同じアプリを使ってメッセージを発信するならば、当然、人々の注目は集まる。

 1月31日に登場したマスク氏は、同氏の宇宙船メーカー「スペースX」による火星到達に向けての任務や、暗号通貨、人工知能(AI)、そしていまも続く新型ウイルス感染拡大について語り始めた。しかしその後、株取引アプリ「ロビンフッド」のCEOであるウラジミール・テネフ氏をステージへ招待し、インタビューを行ったことでClubhouse視聴者を驚かせた。価値のほとんどなかったゲーム販売店「GameStop(ゲームストップ)」の株価が金融市場を沸かせるほどに乱高下したことについて、同アプリが関与した可能性の有無を問いかけた。一時的とはいえ、株価が下がり続けるほうに賭けていたプロの投資家たちにとっては大きな打撃となった。

 このインタビューを経て、Clubhouseについて留意すべき2点が浮き彫りになった。Clubhouseのルーム内での話を録音することは禁じられているものの、ほかの視聴者が録音しない保証はないこと。さらに、そのようにして録音された会話が投稿されることで、1つのルームに参加できる人数は最大で5000人までという、Clubhouseが定めるルールをすり抜ける方法があることも示された。

 2月4日にClubhouseへ登場したザッカーバーグ氏は、ゲームストップ株をめぐる騒乱のような話題性のあるテーマを掘り下げることはなかったが、それでもなお同氏が参加することで人々のアプリへの関心は高められた。実にフェイスブックらしく、同社では、「Fireside(ファイヤーサイド)」と社内では知られている類似のアプリ開発が行われていると報じられている。

◆つまりはIT業界人向けのアプリなのか?
 Clubhouseが始まった当初のユーザーは投資家やスタートアップ企業に関わる人々が大部分を占めていたものの、ユーザー基盤が拡大されるにつれ、利用者にも多様性が高まっている。いまでは、「Ask A Coach: Life, Love & The Pursuit of Joy, Money/Health(教則本:人生と愛、そして成功を追求すること、お金か健康か)」や、「Bitcoin Basics for Baby Boomers(ベビーブーム世代向けのビットコイン基礎知識)」「Drag Race Clubhaus(ドラッグレース・クラブハウス)」「Investing While Black(黒人差別の投資)」「Plant-Based Basics for Beginners with Dietitian Jasmine(栄養士ジャスミンによる初心者のためのプラントベース食品の基本)」などのテーマについて、知識を深めることができる。

◆中国で起きたこと
 この数ヶ月間で、数千人もの中国人ユーザーがClubhouseアプリに殺到している。おもに、民主主義や台湾問題などの公に発言しにくい話題について、他国に住む人々と自由に議論できることが背景としてある。独立を求める声に対し、習近平政権がますます敵対的姿勢を示している状況を考えると実に印象的である。Clubhouseを通じて、香港や台湾に住む人々、新疆自治区北西部から亡命した少数民族ウイグル族と直接対話する機会を初めて得た中国本土在住のユーザーは多い。

 アップルストアでの検閲を監視する団体「アップル・センサーシップ」の活動家であるベンジャミン・イスマイル氏によると、少なくとも12月16日には中国のアップルストアからこのアプリが削除されていたという。それでも、ユーザーが同国以外のアップルのアプリストアへアクセスした場合にはダウンロードが可能であった。

 しかし2月8日、中国人ユーザーはClubhouseへアクセスすることができなくなった。ほかの何千ものウェブサイトやSNSアプリと同様に、中国共産党がインターネット上で運用する、世界でもほかに類を見ないほど大規模な接続規制システムによって遮断されている。

By BARBARA ORTUTAY and MICHAEL LIEDTKE AP Technology Writers
Translated by Mana Ishizuki

Text by AP

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