印スマホ市場、サムスンと中国メーカーがしのぎ 注目されるグーグル、現地キャリアの5G端末

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◆国内老舗スマホメーカーの「復帰」に沸くインド
 11月3日、インドのTwitterで「#MicromaxIsBack」というキーワードがトレンド入りした。これは同日午後、インドの老舗スマホメーカー「マイクロマックス(Micromax)」が新ブランド&新端末ローンチイベントを実施したためで、2年以上新しいスマホを発表していなかった同社の復活に、古参ファンが歓喜したためだ。

 このハリヤナ州グルガオンに拠点を置く企業がオリジナルの携帯端末を出したのは2008年のことで、それまではほかの国内メーカー同様に中国から安価な携帯端末を輸入し、自社ブランドで販売していた。その後2012年から発売したスマホ「キャンバス」シリーズが人気を博し、2014年にはインドのスマホ市場でトップシェアを争うまでに成長した。

 しかし、2015年前後から中国メーカーが次々とインド市場に参入。「マイクロマックス」は同社が得意とする低価格スマホセグメントで厳しい競争に直面することになり、コストパフォーマンスの高いスマホを矢継ぎ早に投入する中国メーカーにシェアを奪われてしまう。以来、同社はスマホではなく、フィーチャーフォンや家電分野に注力して生きながらえてきた。

 こうした経緯を経ながらも「マイクロマックス」がスマホ市場に復帰を果たせた理由は、インド政府が2019年に導入した「国家電子産業政策」の一環で電子機器メーカー向けにインセンティブ・スキーム(生産連動型優遇策)を提供したことにある。このインセンティブを活用し、同社は再び中国メーカーに勝負を挑むことを決意した。Webメディア『Gadgets 360』に掲載された同社の共同創業者、ラフル・シャルマ氏のインタビュー記事(11月2日付)では、6月に発生したラダックでの印中衝突が「復帰を加速させた」と語られており、インドで国産品への支持が高まっている状況も少なからず影響しているだろう。なお、新ブランド名の「in」は「India」も意味している。

 新端末の発売は11月下旬ということもあり、市場シェアに影響を及ぼすのはまだ先のことだが、政府の後押しを受け、「マイクロマックス」「ラバ(Lava)」「カーボン(Karbonn)」といった国内メーカーが勢いを取り戻しつつあることは、インドのスマホ市場を占う上で見過ごせない要素だ。

Text by 飯塚竜二