冬用のマフラーを編むため、緑と白の毛糸を探していたシャーリーン・カタラーノさん。向かった先は大型量販店ではなく、ニューヨーク・ブルックリンにある「Brooklyn Creative Reuse」だった。

店内で見つけたのは、目当ての毛糸に加え、中古のかぎ針編みキットや編み針、ラベルなど。必要なものだけをそろえて、支払いはわずか6ドルだった。

「最近はハンドメイドやアートの人気で、材料もどんどん値上がりしています。でも、ここなら必要な分だけ手に入るんです」

そんな彼女の言葉どおり、この店は単なるリサイクルショップではない。寄付された画材や手芸用品を必要な人へつなぐ「クリエイティブ・リユースセンター」と呼ばれる施設の一つで、アメリカ国内だけでも数百カ所に広がっている。

ニューヨーク・ブルックリン区にある「Brooklyn Creative Reuse」店内 AP Photo / Alyssa Goodman

余った画材が環境問題につながる

絵の具やマーカー、色紙などのアート用品は、多くがセット販売される。そのため、一度の工作や作品づくりで使い切れず、引き出しの奥に眠ったままになったり、そのまま捨てられたりすることも少なくない。

しかし、こうした画材の多くにはプラスチックや化学物質が含まれており、埋め立て処分されると分解までに何百年もかかるものがある。絵の具が劣化すれば、マイクロプラスチックや重金属が環境へ流出する可能性も指摘されている。

そこで注目されているのが、「まだ使えるものを必要な人へ届ける」というクリエイティブ・リユースの考え方だ。

「Brooklyn Creative Reuse」で、棚に並ぶ毛糸 AP Photo / Alyssa Goodman

必要なのは「必要な分だけ」

リユースセンターでは、布をロールごとではなく切れ端だけ、リボンも数本だけ、といった買い方ができる。

ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)の材料科学者ジュリアン・シルバーマン氏は、「廃棄物を減らせるだけでなく、自分では思いつかなかった素材との出会いが創造性を刺激してくれる」と話す。

実際、アート用品を新たに製造するには多くの資源が必要だ。例えば、絵の具約3.8リットルを作るだけでも、およそ49リットルもの水が使われるという。さらに、マーカー1本にもプラスチックや厚紙の包装が施されており、商品の小ささに比べて多くの資材が使われている。

「Brooklyn Creative Reuse」に並ぶ布の端切れ AP Photo / Alyssa Goodman

「半分残った絵の具」にも価値がある

アトランタでクリエイティブ・リユース施設を運営する「Scraplanta Creative Reuse」では、毎月約3トンものアート用品を回収し、教師や学生、地域のクリエイターへ届けている。

代表のジョネル・ドーキンス氏は、「半分だけ残った絵の具や接着剤でも、誰かにとっては必要な材料です」と語る。

誰かにとって不要になったものが、別の誰かの創作を支える。その循環が、廃棄物の削減だけでなく、新しいアイデアを生み出すきっかけにもなっている。

「Brooklyn Creative Reuse」店内 AP Photo / Alyssa Goodman

今日からできる、サステナブルな創作

環境に配慮したアート活動は、決して難しいことではない。

まずは必要な分だけ購入し、使わなくなった画材は捨てずに寄付すること。そして、絵筆は洗う前に布で拭き取り、固まった絵の具を取り除いてから処分するだけでも、マイクロプラスチックが河川へ流れ出るのを減らすことができる。

さらに、身近なものを素材として生かす方法もある。タマネギの皮やビーツから天然染料を作ったり、使わなくなった化粧品を絵の具として再利用したりするなど、工夫次第で表現の幅は大きく広がる。

Brooklyn Creative Reuseを利用したアーティスト兼教師のロジーナ・モレリさんは、画材を買ったこと以上に、自宅に眠っていた材料を寄付できたことを喜んでいる。

「私が一番うれしいのは、物を買えたことではありません。自分が使わなくなったものを、喜んで使ってくれる人につなげられたことです」

アート用品を循環させることは、環境への負荷を減らすだけではない。誰かの「もう使わない」が、別の誰かの「作ってみたい」を後押しする。そんな小さな循環が、クリエイティブの世界を少しずつ豊かにしている。

「Brooklyn Creative Reuse」店内 AP Photo / Alyssa Goodman


By ADITHI RAMAKRISHNAN AP Science Writer