宇宙用トイレ、NASAが24億円のチタン製を試験へ

Norah Moran / NASA via AP

 ここ数十年ぶりに、NASAが宇宙でのトイレ設備を新調する。2300万ドル(約24億円)のチタン製トイレは、女性にとってより使いやすく設計されたものだ。将来の月面旅行に備え、現在、国際宇宙ステーションにおいて本番さながらの試験運用が行われている。

 10月1日の夜遅くにバージニア州ワロップス島から打ち上げが予定されていた貨物輸送機内に、新型トイレ設備が搭載されていた。しかし、カウントダウンが始まり、残り2分を残したところで打ち上げは中止された。

 重さわずか45キログラム、高さ71センチメートルのトイレは、宇宙ステーションにある2台のロシア製トイレの半分程度の大きさである。2、3年以内に宇宙飛行士を月へと輸送予定の、NASAのカプセル型宇宙船「オリオン」に見合った、よりコンパクトなサイズである。

 今後2、3ヶ月にわたって宇宙ステーションで試験的に使用され、調整がうまくいけば実用化される予定だ。

 宇宙ステーションへ宇宙飛行士を輸送中のスペースXと、最初の乗組員が派遣されて1年にも満たないボーイングの両社には、いままで以上にトイレが必要になる。新たなトイレ設備を設置する個室は、アメリカ側モジュールで使用されている従来のトイレの横に置かれる予定だ。

 従来のトイレは、男性により適した設計である。女性にとってより使いやすいように、NASAは新型トイレのシートに傾斜をつけ、座高を高くした。これにより、宇宙飛行士は排便時の姿勢を楽に保ちやすくなると、ジョンソン宇宙センターでプロジェクトマネージャーを務めるメリッサ・マッキンリー氏は述べる。

「排便後の清掃が一大事なのです。ひとつでも見失ったり、外に出してしまったりなどはしたくありません」と、マッキンリー氏は話す。

 無重力状態においては、すべてが空中に浮かんでいることを言い添えておきたい。

 排尿についても、じょうごに新しいデザインが導入されている。女性飛行士は、スコップ状のくぼみが付いた細長いじょうごを用い、便器に座ったまま排便をしながら同時に排尿が可能である。女性宇宙飛行士は、これまでどちらかだけであったと、マッキンリー氏は述べる。

 宇宙で使われている従来のトイレ同様、排泄物は、水と重力ではなく空気吸引により除去される。新型トイレ設備では、尿は回収され、NASAが長年使用しているリサイクルシステムを通じて飲料水や調理用の水へと再生される。尿の処理に際してあらゆる酸からの耐性を得るため、チタンなどの強靭な合金が新型トイレには採用されている。

 宇宙でトイレに行くことは簡単に聞こえるかもしれない。しかし、無重力状態においては「簡単なことが場合によっては非常に困難を伴うようになる」と、NASAのマイク・ホプキンス宇宙飛行士は話す。ホプキンス氏は、10月31日にケネディ宇宙センターから打ち上げ予定であるスペースXの次号船で司令官を務める。

 従来型の設計にそれほど不便はないといえ、女性にとってはわずかな設計変更が大きな効果を生むこともあると、NASAのシャノン・ウォーカー宇宙飛行士は述べる。ウォーカー氏は宇宙ステーションでの滞在経験をもち、スペースXの次号船に同じく搭乗予定である。

「まじめな話、はるか宇宙においてトイレは必要です。とても大切なことであり、使用方法を知らないことは健康に影響しますから」と、9月末頃、ウォーカー氏はAP通信に語っている。

 次回のスペースX宇宙船によるフライトにより、宇宙ステーションへ滞在する定員が6名から7名になる。さらに、早ければ来年以降、観光目的の民間人が搭乗するようになれば、その数はさらに増える。宇宙飛行士の滞在期間は、通常6ヶ月間である。

 前回、NASAがトイレ設備を導入したのは1990年代初めであり、2週間にわたるスペースシャトルでの宇宙飛行に備えるためであった。NASAは、最新モデルを導入するにあたり、スペースシャトル用トイレ設備に取り組むコリンズ・エアロスペース社と契約を結んだ。

 全質量3600キログラムにおよぶノースロップ・グラマン社のカプセル型宇宙船「シグナス」には、微量の空気漏れを埋めるための空気タンクや、温室栽培用のダイコンの種、宇宙遊泳をしているかのようなVR映像を撮影するための360度カメラなどが搭載されている。

 おそらく、積載されているなかでもきわめて珍しいのは、エスティローダーによる最新の美容液だろう。同社は、とびきりの写真撮影を行うために12万8千ドル(約1350万円)を投じている。残された最後のフロンティアをマーケティングや産業、観光業の分野に向けて開放すべく、NASAによって取り組みが進められている。

 ただし、トイレの消臭用アロマとしての使用は期待できない。この10本の美容液は無香料であり、来年初めに地球へ帰還するまで開封されることはないのだ。

By MARCIA DUNN AP Aerospace Writer
Translated by Mana Ishizuki

Text by AP